Neetel Inside 文芸新都
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ショートショート集
発達の弊害

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あるところに惑星があった。その星はすさまじい発展を遂げていた。
しかしあるときに言論人の一人がこういった。
『これ以上発展してどうするんです。機会に完全に生産と管理を任せ
我々人間は遊ぶべきです』
発展を遂げていても、労働時間はあまり減っていなかった。そうだ。
そのとおりだと言う声があふれた。そしてその事を選挙公約とするある
党が当選した国があった。その国の人間は遊び放題、とはいっても
働いていないので限られていたが…。しかし働かなくても食っていけるし、
ある程度は遊べるのだ。わが国もそうするべきだという声が増えた。
最終的には全ての国がそうなった。そして世界は統一された。

それから数百年後。一人の男が創作のアイデアを得るために街に
出かけいていく。その男はあり余った時間を使ってSF小説を
書いていたのだ。しかし全然かけない。男はふと電気屋の
中に入ってみた。そこには様々なものがあった。その一つ一つを
見て男は気づいた。どれもこれも昔のSF小説の中に出てくるもの
じゃないか。いま目の前にあるこのタイムマシンも確か昔の作家が
考え出したものだったはずだ。そしてあれもこれも。男は自分が
小説を書けない訳を悟った。男は小説をかけないとは言っても
アイデアは思いつくのだ。しかしながらその小説はどこかで見たような
気がするのだ。試しに電子図書館で検索してみると案の定ほとんど同じ
内容の小説があるのだ。そうなると男は書く気をなくしてしまう。
男は考えた。
「全くなんという事だ。いっそのこと他の分野の小説を書くかな。
いややめておこう。どうせ似たような小説があるに決まっている。
何しろずっと昔からたくさんの人間が小説を書いてきたのだ。
しかも大きな事件もないからそれを基にした時事小説もかけない。
かといって小説以外のことをしようとしたって同じだ。どうせ
天才的な奴が画期的なことをした後なんだ。誰もやらないような
ことをしようとしたって無駄だ。たぶん俺が考えつくようなことは
もう誰かがやっているんだろう。これは発達の弊害とでも言うのかな」
男はそう言って天を仰いだ。男の落胆は大きい。なぜなら大きな
発達の弊害が二つあるからだ。人類はろくに運動できなくなってしまった。
運動する必要がないからだ。少しぐらいしか歩けない。また医学の発達に
よって男の寿命は少なく見積もってあと千年ぐらいはあるのだ。

       

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