Neetel Inside 文芸新都
表紙

ショートショート集
大冒険

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一人の男が酒屋で酒を飲んでいた。その男の職業は冒険家だった。
十数年前に莫大な財宝をとある辺境の星で二人の仲間達とともに
見つけたので中々有名だった。そこへ一人の男が息を切らして
走ってきて男に興奮気味に声をかけた。
「おいお前。宝の地図を見つけた。今度こそ本当だ」
「本当かよ」
男は疑いながら聞いた。なぜかというとこれまで何度も
男の情報は偽者だったからだ。唯一本当だったのは十数年前の
情報だけ。
「そういうな。冒険に失敗はつき物。本当に財宝があったら
運がいい。なくて当然。そう考えなきゃやってられん」
「とはいっても金もだんだん減ってきてるぜ」
男達が得た莫大な金も豪遊したり冒険の費用に
使ったりして減ってきていた。
「まあいざとなったら借金という手もあるさ。それよりも問題は
仲間をどうするかということだ。あの二人をなくしたことは実に
惜しかった。これまでの冒険で使った連中は皆役立たずだった」
あの二人というのは莫大な財宝をともに見つけた二人の親子の
ことであった。二人とも失敗に終わった冒険の帰る途中で
不慮の事故で死んでしまった。
「募集の広告をもっと大々的にするとか、報酬を
上げたらどうだリーダー」
「うんそうしよう。なんていったて今回の情報は信憑性が
高そうだからな。地図が現地の言葉で書かれていた」
「何で読めたんだ」
「山の名前が書かれてあってなたまたまその山を知っていたんだ。
そのおかげでその星の言語の辞書を買って、必死で翻訳した。
とはいってもまだ途中だが…」
「その山はなんて名前なんだ」
「フォレステ山だ」
「どこにあるんだ」
「アパラチ星にある」
「聞いたことがないが…」
「まああまり有名な星ではないからな。大して大きい星でもないし、
有名な特産物があるわけでもない」
「どここから何日ぐらいかかるんだ」
「1週間くらいといったところか。先住民とかも少しぐらい
住んでいるらしいから食料は持っていかなくていい。」
「そうか。先住民の連中はガイドにも使えるな」
「そうだ。だから仲間の数はそんなに多くなくていい。
二人でいいだろう。募集とかは俺がやっておくから面接の時だけ
会場に来てくれ」
「分かった。今回の冒険も無事に終わらせような」
「ああもちろんだ」
そう言ってリーダーは肩を叩き酒場から出て行った。その後男は
心の中で馬鹿な奴だ殺されるかもしれないのにと思った。

実は男は前々からリーダーの男をよく思っていなかった。それに
リーダーと男は高額の保険を掛け合っていたのだ。
男の生活は最近苦しくなってきていた。リーダーは分け前の多くを
自分のものとしていたからだ。そのために殺害計画を
立てていたのだ。冒険には事故がつき物だ。事故に見せかけて
多額の保険金を取ろうという計画だ。リーダーは男の計画には
全く気づいていなかった。

数週間後男にリーダーから連絡が入った。書類選考である程度
落としたので面接をやりたいということだった。そして男にも
来て品定めしてほしいということだった。男は面接会場へと向かった。
そこには屈強な連中が数十人ぐらいいた。皆一攫千金のために来たの
だろう。男がほとんどだが女もちらほらいる。面接といっても
冒険のための面接だ。体力テストや宇宙船の運転技術や整備技術を
テストする。その結果二人が選ばれた。一人は男で一人は女。
2人とも若かった。体力はもちろん技術なども他の参加者に比べて
ずば抜けてよかった。数日後その連絡が二人に届いた。

男のほうはこう思った。
やれやれ面接に受からなくて上司から怒られずにすんだ。
実は男は警察官だった。幾度の冒険でたくさんの
死者が出ていた。それにリーダーは仲間たちに保険金をかけさせていた。
受取人はリーダー。それによって男は莫大な金を得ていた。とはいっても
冒険の費用でそんな金は吹っ飛んでしまうのだが…。警察は男が
使えなそうな仲間を事故に見せかけて殺しそれによって冒険費用の
穴埋めにしているのではないかと疑っていたのだ。そのために警察は
潜入捜査としてこの警察官を送り込もうとした。この男は中々優秀な
男だったので冒険についていけるのではないかと思ったのだ。
そして警察のもくろみは見事成功した。

一方女のほうはこう思った。
やっとこれであいつらに復讐することができる。
実は女は事故で死んだあの親子の肉親だった。親子の事故は
検証されることはなかった。何しろ遠い辺境の星のことだったし、
事故の証拠などは残っていないとリーダーたちが話したからだ。
しかし女は男たちに対する復讐心を日に日に高まらせていった。
何しろ母親は女が幼いときに他界してしまったので、かけがえの
ない父と兄だったのだ。それに女の生活は苦しかった。親子の
取り分は多くなく冒険の費用は平等に負担していたためだ。
リーダーたちを殺せばその保険金は残った仲間で分配されるのだ。
復讐もできるし金も手に入る1石2鳥の計画だった。

そのものたちはリーダーの宇宙船でアパラチ星の空港に降り立った。
宇宙船の中で特に問題は起きなかったが、リーダーも男も潜入捜査官
も女も皆疲れていた。男は念のためにリーダーに尋ねた。
「これからは列車で行くんだよな」
「ああその通りだ。フォレステ山はこの星でも辺鄙なところにある。
一番近いこの空港からでもかなりの距離がある。電車も近くまで走ってない。
まあ元々この星は植民地となるまでは我々の時代で言う20世紀の
初めぐらいの文明水準だったからな。あまり交通網も発達していない。」
「じゃあそれからは自動車で行くのか」
「ああそうだ」
列車の中でもリーダーは何度もフォレステ山の情報をしゃべった。男が
その話は宇宙船の中で何度も聞いたというとリーダーは
地図に書かれている文字の解読作業に取り掛かった。リーダーは
その作業を他の者たちに見せなかった。しかし地図の情報についてたまに
もらすこともあった。それによると地図はボロボロでいかにも宝の地図
らしい物なのだそうだ。解読作業は宇宙船の中で大体終わっていたが、
裏の右上に書かれている文字が消えかかっていて読みづらいのでその
部分は全く解読できていないらしい。リーダーが解読作業に没頭
している間に列車はフォレステ山に一番近い駅に着いた。

リーダーは町で数日かけて登山の達人たちを集め、雇った。しかしながら
そのものたちの中には危ないからよしたほうがいいと言うものもいた。
また一人の老人はこういった。
「なんだかフォレステ山の冒険のような話ですね」
「なんだそれは」
リーダーはその話を知らなかった。
「まああなたたちのようなほかの惑星の人は知らないと思いますが、
この惑星では有名な小説でしてね。バージナという人が60年ほど前に
書いた小説でしてね。そう言えば初回特典で地図か何かが
ついていたような…」
「そんな話があるのか。それは縁起のいい話だな」
「そんなことを言わないであの山には登らないほうがいいですよ」
「何でだ」
「様々な危険があるからですよ。まあさすがに小説の中に
出てきたような猛獣はいませんが…」
その言葉をリーダーはこう笑い飛ばした。
「なにを言うかと思ったらそんなことか。ははっ。俺は今まで
何度も危険な冒険をしてきたんだ大丈夫だ」
しかし老人は男をとめようとしたが無駄だった。

数日後リーダーたちは吹雪の中フォレステ山の登山口に立っていた。
4人のメンバーのほかにたくさんの現地人を引き連れて。皆黙々と
進んでいった。宝の場所はリーダーしか知らなかった。進むごとに
行くべき先をリーダーが言う。リーダーはまだ地図を解読しきれて
いなかった。あるとき地図の解読に悩むリーダーに対して通訳が
訳しますよといったがリーダーはそれを拒否した。彼は人を
信用しないのだ。どうやらほとんど解読できているようだが裏にある
文がいまだに解読できないらしい。しかしそれに関係なく探検隊は
一歩一歩進んでいった。

あるときテントの中で一人解読作業をしていたリーダーが
大きな声を上げた。仲間たちは外側から解読できたんですかと聞いた。
しかしリーダーはできていないといって出てきた。とても挙動不審だった。
それからのリーダーは様子がおかしく。何か皆に言いたそうだったが、
何しろ厳しい登山だし、数人の死者も出たのでそれに気づくものはいなかった。
長い時間をかけてリーダーたちはやっと目的の場所辺りについた。
潜入捜査官がリーダーに聞いた。
「それで一体宝はどこら辺にあるんです」
「それが良く分からんのだ…。まあここら辺だと思うが。適当に探してくれ」
その男の言葉を受け皆それぞれに宝を探し始めた。数時間ぐらいしただろうか
洞窟を探していた一人の現地人が声を上げた。みなそこに集まった。皆が
そこで見たものは金銀財宝。一体どれくらいあるのか分からないほどの量だ。

男はこう思っていた。
一体いくらあるんだ。前の冒険の数十倍くらいの価値はあるだろうか。
今度こそ一生豪遊できる。保険金殺人なんて中止だ。中止。

潜入捜査官はこう思っていた。
なんということだ。一体俺はどうすればいいんだ。この金は警察に
やらなければいけないのか。いやそんな馬鹿な話はない。警察など
さっさと辞めてしまおう。

女はこう思っていた。
こんなに莫大な金が手に入るなら、復讐なんてつまらないことを
して捕まるのはやめたほうがいいわ。この金で楽しく暮らしたほうが
父と兄も喜ぶはずよ。

一方リーダーはこう思っていた。
そんなばかな。
なぜならば解読した地図の裏にはこう書かれていたからだ。

バージナ著 フォレステ山の冒険初回特典地図





       

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