Neetel Inside 文芸新都
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ショートショート集
おなら

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その日男は仕事の用でとある会社を訪れることになった。その会社は世界一の大企業で、
本社のビルは千階建てだ。男はもともと今日はおなかの調子がよくなかった。それに大仕事
ということで緊張していた。そのため男はおならがしたくなった。それもエレベーターの
中でだ。エレベーターの中には男のほかにも十数人乗っていた。その中で目立っていたのは
中年の男とそれを囲んでいる体格がいい男たちだった。男はもしおならをしたらこいつらに
何かされるんじゃないかと直感で思った。それに他にも人がいる。何しろ自分は他社の人間
なのだ。自分の社の名を汚すわけにはいかない。そのため男は必死で耐えた。階がどんどん
上がってくるにつれてだんだん耐え切れなくなってくる。男の目指す階は985階だ。着くには
だいぶ時間がかかる。しかし階が上がるごとにだんだん人は降りていく。男は一人になれるの
ではないかと思った。しかしそれは間違いだった。例の中年の男とそれを囲んでいる体格が
いい男たちが一向に降りない。男が降りろ降りろと思っても降りない。男は耐えに耐えた。
男の苦痛は尋常なものではなかった。だがやっと985階に着いた。がその瞬間男は安心した
せいで力が抜けおならをしてしまった。中年の男が男のほうを向きこうたずねた。
「君は今おならをしたかね」
男は正直に謝ることにした。
「申し訳ありません。本当に申し訳ありません。」
しかし中年の男は意外なことを言った。
「いや。いいんだよ。私はこの会社の社長なんだがね。むしろうれしいぐらいだ。ちなみに
周りの連中は私のボディーガードだ。」
男は社長ということに驚きうれしいと言ったことに驚いた。一瞬男は社長は変態なのかと
思ったがそういう風には思えなかった。男は質問をしてみた。
「あのうれしいとはどういったことで。」
「実はな私の家系はおならの音を聞くといい事が起きる家系なのだよ。」
男は最初信じられなかったが、わざわざうそをつくわけはない。しかし疑問に思ったことが
あった。
「それならば、わざとおならをさせておならの音を聞き続ければいいんじゃないんですか」
社長は苦い顔をしてこう答えた。
「この能力の悪い点は三つある。まず一点目はそこだ。この能力が発揮されるには偶然
でなければいけないんだ。故意にやってもだめだ。二点目はいざという局面が迫っていないと
いけない。今日私は重要な会議がある」
「はあ。では最後のの悪い点とは何ですか」
社長はにやりと笑ってこう答えた。
「それはな一回私に聞こえるおならをしたものがまた私に聞こえるおならをしたら
逆効果になるということだ。それを防ぐためにはこうするしかない」
気がつくとボディーガードたちの手には拳銃が握られていた。

       

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