Neetel Inside ニートノベル
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そうだ。本当は、あいつは悪くはなかった。
私が勝手に彼氏を奪われたと思ってただけだから。



本当は私だけが悪いことは分かっていた。
あいつは何も悪くなかった。
いや、「あおい」は何も悪くなかった。


ごめん、ごめんね、あおい。




そして、大好きだよ、あおい。















この状況を男は全く理解できなかった。


「おいおい、なんで『恨み』を奪ったら、号泣してんだよ。
 意味が分かんないな。」



いや、『恨み』を奪った時に出てくる『悲しみ』など、普通の人には想像できるはずもなかった。


けれども男はそんなことなど、どうでもいいことに気が付き、
さらに、ほくそ笑んだ。


 

「でも、ちょうどよかった。俺はそんな号泣する悲しみが欲しかったんだ。
 だけど、葬式があるからって来て見たら、ほとんどの奴が泣いてない。
 一人泣いてるやつを見つけたけど、結果、いまいちの悲しみだった。
 ほんと、無駄骨かと思ったんだがな、どうやら、そうならなくて済みそうだ。」


彼が泣いてる私を見て、とても嬉しそうに話しかけ来る。



けれども、彼には申し訳ないけど、この感情はあげれない。
だって、この感情があれば、あおいが私の中でずっと居続けている気がするから


「ごめんなさい。これはあげれないわ」

これでいいんだ。私は『悲しみ』という感情を持っていることが『嬉しく』思っている。






そして、私はあおいのことを一生忘れないだろう。















      ザクッ。






「・・・・え!?」



背中に痛みが生じる。
そして、私から何かが出て行く。




「おい!!!お前、ふざけるな!!
 何か勘違いしているだろう。俺は最初から言っていたはずだが?
 感情を『奪う』と。」


さっきも急に射してきたけど、やっぱりコイツおかしいと思った時には遅かった。


「お前に選択権などない。俺が一方的に決めれることだ。」




男は私を押さえつけ、冷酷な表情で私を凝視する。
その顔は、悪魔のようで、この世のものとは思えない程であった。



私は一瞬、身がすくみ、何もすることができなく
かろうじて叫ぶことができたが、全くの無駄であった。




「ククク、そんなに怖がらなくても大丈夫だって。
 第一、悲しみなど持っていない方がいいに決まっている。

 …けれども俺には必要なんだ!欲しくて欲しくてたまらないんだ!
 だから全部貰ってやるよ。感謝しな!!」


私は身の恐怖を感じた。だから、針管が折れることなど気にしていられなかった。
力の限りめいいっぱい、彼を振り払おうとする。

しかし残酷にも、彼の前ではなす術もなかった。


「あおい・・・あおい・・・・・・・。」



そう言いながら、私はその場に、無表情で倒れた。



そして、さきほどからの一連の流れを、この場にいる全員が見ていたが、
男の狂気の沙汰に、場は凍りつき、


一人悠々と帰ってく男を、誰も止めることはできなかった。



「すごい、すごいぞ!!今までで一番大量だ!!あいつ、すごいぞ!!・・・ククク」



いや、もしかしたら彼を止める感情を持っていないかったのかもしれない。


       

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