Neetel Inside ニートノベル
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Ash syringe 〜蝋色射物〜
始まりの監禁

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私が目を覚ますと、そこは何も無い部屋だった。

あるとすれば、イスと机、そしてテレビだけ。
窓やドアさえ見当たらなかった。



いや、もう一つあった。

男の人があった。
目の前で座っていた。



その人は俯き、眠ってるように見えたので声をかけようとした。
けれども、声を掛けるために動こうとしたら、何かに引っ張られた。


よく見ると私は、全身に鎖が絡められていて動けないようになっていた。





「起きたのか。待ちくたびれたよ」



急に声をかけられたのでビックリした。
どうやら、寝てると思ってた男の人は起きてたみたいだった。



「眠ってたと思ったのに、起きてたのですか」


男の人は立って、こっちにやってきた。


「他に聞くことは何もないのか?」



全然思いつかなかった。
いや、思いついた。


「お腹が減ってるみたい、何か食べたいです」


男の人は呆れた顔で私を見た。


「お前は、今置かれてる立場が分かっているのか?
 お前は拉致されているんだぞ?
 なぜ抵抗しない、なぜ暴れない、なぜ叫ばないんだ。」


拉致という言葉を聞いて思い出した。
お父様がいつも、それには気をつけなさいって言ってた気がする。


「そうなのですか。拉致なのですか。
 そして、拉致の時は、抵抗して、暴れて、叫ぶのですか。
 知りませんでした。」


男は呆れるのを通りこして、唖然とした表情で私を見てきた。


「・・・お前、をぼこか。」


「をぼこ?」


「箱入り娘、とか世間知らず、って意味だ。」


「あ、それならよく言われます。
 この前も親友の、あっ、間違えた。
 大、大、大親友のユミちゃんから言われたことがあります」


「大、大、大親友とは、なんだ?」


「あ、それはですね。この前まで、親友なるユミちゃんだったんですけど、どんどんレベルアップしましたの。」


「・・・。」


「お兄さんも、どんどんレベルアップして、グレートビックリお兄様になって下さい」


「遠慮しておく。」


男の人は頭をかかえていた。
もしかしたら、私、話すことは、とても大好きだけど、苦手だから
分かりにくかったのかな?

だとしたら、悪いことをした。



「お前と話していると、訳が分からなくなる。
 簡潔に言おう。・・・いや、その前に、このテレビを見てくれ」


テレビには女の人が映っていた。


「あ!大、大、大、親友のユミちゃんです!」


ゆみちゃんがする遊びはいつも楽しい。
この前の、フィーバー鬼ごっこは、最高のひと時でした。

そして、今回は目隠しして遊ぶゲームなのですね。



「分かったか?お前の親友のユミちゃんとやらも、拉致されている。
 そして、簡潔に言おう。

 お前か、ユミか。どちらか一方に・・・
 死んでもらおうと思っている。」

       

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