Neetel Inside ニートノベル
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物憂いプロトコル
みんな大好き。

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 一月一日。
私は朝食として餡子餅と海苔餅を食べて、緑茶を飲んで舌を火傷した。
なんとなくテレビをつけてなんとなく見て、意外と笑った。
昼過ぎに、朝見た夢を思い出そうと努力してみたが思い出せず、夕食を食べている時になってなんとなく、そして鮮明に夢の内容を思い出した。
夢の中で私はたくさんの猫を家に連れて帰った。
母は一匹、また一匹と猫を家から追い出していった。
最後に残った黒い猫を母が追い出そうとして近づくと、猫はのろのろと立ち上がった。
猫は体がごつごつとしていて、全長が3mくらいあった。
私が連れて帰ってきたときは小さい子猫だったのに。
猫はとても凶暴そうだったので、家族が襲われる前に私は窓から外に出て囮になろうとした。
でも父は私が逃げ出したんだと思い、「俺たちのことは気にするな」と私をフォローした。
結局、猫は私を追いかけてきて、私は必死に逃げなければならなかった。
私は怖くなかったし、捕まるような気もあまりしなかった。

     


     


 一月二日。
本屋で小説と漫画を買った。
会計の時に、ふざけてギャグ漫画日和の八巻と九巻の間に虎よ、虎よ!をはさんでみたが、店員は病院で病気の人を見かけた時のように、面白い出来事どころか面白くない出来事さえもなかったようにバーコードを読み込んだ。
年初めということで、小さなキャラクターもののストラップをもらった。
キャラクターの背中には、それが中国で作られたものだということが控えめに示してあった。
キャラクター自身が持つ儀式的な杖のようなもののせいで直立できない構造になっているそれを見ながら、中国の工場で働く人は何を思いながらこれを作ったのか想像してみたが、それは私が想像できる範囲の外だった。

     


     

 一月三日。
特になし。
でも気分がとても良かった。



 一月四日。
ネットで気になる画像を見つけた。
小汚くて狭苦しい部屋で、三人の若い男がエアガンをカメラ側に向けて構えている画像なのだが、こちらから見て右端の男がどう見ても中学二年生の時に転校して岩手に行った同級生の大平君なのだ。
青白い肌と細い目と眼鏡がそっくりだった。
当時の大平君より多少ふくよかだが、そんな相違点が連続性を示しているようで、もう私には大平君にしか見えなかった。
見ていて気持ちの良い画像ではないので、保存はしなかった。
「これ大平君に似てない?」と尋ねる相手も居なかったし、実際に彼が大平君なのかどうか調べる術は悲しいほどに無かった。
でも私はそれが結構、本当に悲しかった。


 一月五日。
人に慣れた野良犬の「ニオブ」が死んでいるのが見つかったらしい、と母から聞いた。
バットで殴り殺されていたらしい、ということも母から聞いた。
私は悲しくなかったけど、きっと蛍子は悲しむだろうな、と考えた。
私は、ベッドに入ってうとうとしかけた時にニオブが媚びるように擦り寄ってくるところをふと思い出して泣いたりはしなかったけど、蛍子はきっと、お風呂で髪を洗っている時にニオブの薄汚い灰色の毛をふと思い出して泣いただろうな、と考えた。
実際にそうしたかどうかは分からないけど。
私は蛍子のメールアドレスも電話番号も知らないから。





       

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