Neetel Inside ニートノベル
表紙

探偵姉弟
第一話 アリバイトリック!! 姉弟探偵、登場。

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自転車をこぎ始めると、冬の冷たい風が体に当たった。
これだから冬は嫌なのだ。四季なんか、無くても良い。
そうすれば、1年中快適な気温で過ごせる。寒さにも、
暑さにも苦しまない。だが、四季の無い生活など、
この日本では不可能だな、と俺は思い、ため息をついた。
 隣では、姉も寒そうに自転車をこいでいた。
小さい体が、寒さに一層縮こまっているように見える。
そんな様子の姉を見て、俺は話しかけた。
「寒いな。冬の登校はやっぱり辛い。できれば車で
 親に送ってもらいたいよ」
「確かに寒いわね。でも、親に車で送ってもらうなんて
 事は無理よね……。それを許したら、学校に自転車で
 登校して来る人なんて、いなくなってしまうもの」
「確かにそうだな、現実を受け入れて、普通に自転車で
 登校するしかないか」
 そう言うと、俺は再び黙って自転車をこぎ始めた。
しばらく直進すると、横断歩道が見えた。
 俺と姉は、そこを渡ると、左に曲がった。
 すぐ脇には、川が流れている。ゴミがいくつか浮かび、
水は濁っていた。川の名前は月根川といった。
 そのままゆるく右にカーブした道を進んでいると、
交差点に差し掛かった。
 そこに設置しされている信号を見ると、赤色のランプが
点灯している。目の前の道を、通勤のための車が何台も
走っていた。しばらくすると、信号が青に変わった。
 俺と姉はそれを見ると、右に曲がった。そしてしばらく
直進していくと、学校が見えた。
 その学校は、俺、沢野裕太とその姉、沢野礼菜が通う
中学校――駒東中学校である。
 俺と姉は校門の前で自転車を止め、自転車から降りた。
そのまま自転車を押し、校門をくぐった。校門には、
校長である高杉憲一が立っていた。彼に向かって挨拶すると、
俺と姉は自転車置き場へ向かった。
 そのまま自転車を押して歩き、姉のクラスで
ある2年1組の自転車を置くスペースまで来た
所で、じゃあまた、といって俺と姉は別れた。
 姉と別れた俺は、自分のクラス、1年4組の自転車を置く
スペースまで来ると、そのスペースの端に自転車を停めた。
 朝練のある運動部は既に来ており、その自転車に先に
自転車を停められていたので、そこしか停めるところがない。
だから、いつも俺は自転車を端に停めていた。
 自転車を停めると、校舎へ向かって歩き始めた。寒いので、
ポケットに手を入れたかったが、教師に注意されそうなので
止めておいた。
 歩いていると、これから自転車を停めるのであろう何人かと
すれ違った。その中には、同じクラスの人もいたが、俺は何も
声をかけなかった。すれ違った時、わざわざ声をかけるような
仲のいい人など、クラスの中には居ない。
 しばらく無言で歩き、校舎へ着いた。昇降口で靴を脱ぐと、
上履きに履き替えた。この動作を、俺は機械的に行った。
このような事は、習慣になっているのである。
 2階へ階段を上がって、右に曲がり、少し歩くと、我が
クラス、1年4組が見えた。
 ドアを開け、クラスに入ると、クラスメイトがざわついていた。
 何だろう、と思ったが、何があったのか聞く相手もいない。
仕方なく、黙って自分の席へ行き、座った。

       

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