Neetel Inside 文芸新都
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 ズバンという音がしたと同時にボールは相手のコート裏へ落ちていた。
「た、タクヤ君?」
「ご、ごめん。柊さんはネット際でセンターやってくれる?
 あいつら全然容赦ないし、勝つつもりでやらないと怪我する」

「う、うん」
 あれだけの剛速球が腕に当たったのにタクヤは微塵も痛みを感じない。腫れもない。
 ギャラリーからは歓声の声があがる。
「なんだ、タクヤってひょろ男って感じだったけど、意外と男前じゃね?」
「なんか、ちょっと凄かったな」
「おい、みっともないやられ方すんじゃねえぞ!」
 何故か沸くクラスメイト達。みっともないやられ方するなだって? するだろ。
「1-1」
 ジャージ男がサーブを打った女子の方へ歩いていく。
 そしてあろうことか頬を引っぱたいた!
 小気味いい音がして、その巨体の少女は顔を横へ流した。
「何やってやがんだ! 本気でやれェ! 今度無様な返し方されたら退部だぞ!」
「はい!」

 振り返るブサイク女子A。まずい、目がマジだ。本気と書いてマジ切ってる目だアレは。
 すると、その少女へ先ほどのちっちゃい子が何やら話しかけている。
 ちっちゃい美少女最高だな……。
「フォーメーションチェンジ!」
「え?」
 小さい女の子を中央へ配置した布陣。それを取り囲むように巨体の少女が五人、対角に均衡に並ぶ。
「ゲーム再開だ」
 そういって柊がボールを受け取る。
「私がサーブするね」
「うん……気を付けて、打ったらすぐにネット際に戻って」
「おけ」

 柊は真剣な表情でコート後ろへ下がる。
「ン……」
 腹式呼吸法だ。柊は腹に力を溜めてボールを宙へ投げる。運動神経の良い彼女ならまずミスすることはない。
「――ハァッ!」
 バンと弾ける音がした。すぐさま前進する。
 繰り出したボールは速球も速球。同年代なら男子ですら取れないような速さだ。流石格闘家。
 というか、彼女がバレー部でないことが驚きだ。

       

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