「う……くっ……」
僕の邪道スネークがその姿にいきり立つ。
ただでさえ若い娘の匂いが充満するこの部屋では、一度起き上がるとなかなかに収束が困難であった。
「タ~クヤ!」
鈴音が後ろから抱きつく。
一瞬、教室の空気がぴりっとしたが、それは気のせいだろう。
「な、何だい。鈴音さん」
肥沃な乳房……はないが、申し訳程度の乳房が僕の背中に押しつけられる。
「だめって、言ったでしょ。私を見ていてくれないと♪」
どこか凄味を帯びた声色で、鈴音の声が僕の耳に響いた。
「は、はい」
教室の空気は如実に痛いものに変わった。
無理もない。ここは男子一人VS女子軍団。僕の容姿がどうであれ、
イチャイチャしている男女がたった一組で生存して良い場所ではない。
「鈴音さん、お願いだから離れて……」
「はい、離れたよ」
そういうと鈴音の腕は僕の腕に巻き付いた。
何だ、恋人か。
「って、違う違う。距離を置いてってことだ」
しぶしぶ距離を置く鈴音、とそこに一人の女子生徒が近寄ってきた。
「ちょっといい」
横柄な態度で取り巻きの女子を従えるその姿は、さながらボス猿のようなちんけな凄味を帯びていた。
猿と言っても、実際は目のくりっとした美少女であるだけに始末が悪いが……。
「なに?」
あからさまな敵意に鈴音がすぐさま反応する。
「あなた達、朝陽さんと、タクヤ君ね。復学早々もう少し穏やかにできないの?
教室でそんなことされると迷惑だわ」
みんなもそうよね? と後ろを振り返ると、彼女の訴えに少なからず首を縦に振る少女達。
「あら、それは嫉妬? それとも僻み? あなた達だって充分うるさいわよ。
生理用のナプキン貸してだとか、コロンがどうだとか」
明らかな売り言葉に女子生徒も顔を赤くする。
「何よ、自分だけ男一人つけたくらいで偉そうに。
そんなにイチャイチャしていたいなら勝手にすればいいわ。ただし、後で痛い目みても知らないわよ」