Neetel Inside 文芸新都
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 2XXX年 6月某日。

 それなりの土地と財産を持った私、滝川家には病弱な姉がいた。
 名を滝川凜々という。
 綾女とは対照的な黒い長髪。目尻の際は凜とし、すらりと立つその姿は異彩を放ち、
 肌は肌理細やかで、光に晒されるとまるでこの世のものとは思えないほど美妙な様であると、
 家族の者ですら溜め息をつくほどだった。
 普段は使用人や専属の医師、家庭教師などを囲わせて、家の中で過ごしている。
 そんな姉の元へいつものように私は足を運ぶと、驚くべき光景を目の当たりにしてしまう。

「ん……あぁっ……」
 部屋の扉の隙間から漏れる声。
 私は嫌な悪寒が走った。
 あの潔白で何の穢れも知らない姉が、まさかこんな甘美な声を喘いでいるなんて。
「あぁっ……、んっ、はぁっ」
 それは、私が見たこともない姉のあられもない姿だった。
 大きく開かれた華奢な脚の間にある仄かな桃色のスジ。
 そこに沿えられたか細い指は淫乱に動いていた。

「はぁぅ……っ、んっ、あぁっぁあ!」
 触れれば壊れてしまいそうなくらい柔らかい色をしたそれは、
 淫らに銀色の飛沫をあげながら高い音をさせている。
 私はどうすることも出来ず、頭の中で視界と現実とを切り離されてしまったような、
 もやもやとした感覚に襲われていた。
「う、はぁっ……いっクぅうぁぁあ!」
 白い肌は淫靡に揺れて、弓なりに反れる。
 涙を流しながら、それでも指の動きは止まらない。
「く、はぁっ……あぁっ!」
 私は姉がそれを好んで行っているようには思えなかった。
 私の頬にも一縷の雫が走り、気づけば私は部屋へと踏み行っていた。

「お姉様っ!」
 姉は朱に染めた艶姿で私を見た。
 女の私ですら、その姿は男の性を揺るがすものだとはっきりと認識する。
「あら? どうしたの?」
 姉は私を見て何とも思っていないのか、冷たい視線で下から上へと睥睨した。
「ごめんなさいね。私が手淫に耽っているのを見てしまった。そういうことでしょう?」
「……は、はい。でも、お姉様、出来ればそういうことは……」
「何? 私もただの女。綺麗な女が自慰をするのも不細工な女が自慰をするのも一緒でしょう?」
「ち、違います。私が言いたいのはお姉様のお体で――」
「黙りなさい小娘。ちょっと顔が良いからって調子に乗るんじゃない。私が今までどれだけ苦労してきたか
 ……それを思えば、こんな体、どうなったって構いやしないのよ」
「……?」
 雰囲気がいつもと違う。
 初めに感じた違和感はそれだった。
 しかし、それを肯定できるのに至ったのはすぐ後のことだ。

       

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