「くそ、これは迷子にならないように気を付けないと……」
そう思うも、振り返ると既に無限回廊のように果てしない廊下が続いていた。
手当たり次第に扉を開けてきたが、まだ六つか七つ目だ。
何かおかしくないか?
タクヤが来たときに見たこの屋敷の大きさは、
少なくともこんな先が見えないほどではないはずだった。
しかもどの部屋も同じようなインテリアに見える。
「…………」
タクヤは部屋にあった置物を配置換えし、それを記憶しておいた。
続けて次の部屋へ入る。
一つ……二つ……。似たような部屋が何度も続く。
三つ目の扉に手を掛けたとき、異変は起きた。
――ゴト。
「!」
タクヤは部屋の中で何かが動いたのを見た。
元に戻っている?
同じ部屋を続けて見ているという前提が違うのかも知れない。
タクヤは再び配置を組み替えた後、一度部屋を出て、もう一度同じ扉を開いた。
ゴトゴトゴトドドド……。
それは奇っ怪な現象だった。
あらゆる家具が元の位置へ戻ろうとするが、その動きは元の『完全な位置』を探すように微振動している。
「な、なにがどうなってるんだ」
蝋燭立ては回転し、ベッドはポルターガイスト現象のように飛び跳ねている。
しかし、その騒音まがいな現象は諦めたかのようにぴたりと鳴り止んだ。
――どさ。
部屋の中央で何かが落ちた音がした。
タクヤは恐る恐るそこにライトを向ける。
「――――」
どうやらまた女の子のようだ。
「ん――」
意識はあるのか、タクヤが駆け寄り起こすと、わずかに声を発した。
「おい、大丈夫か」
触れた体は汗でびっしょりだった。
女特有の臭いが、妙に気分をかき乱す。
「あ、やだ……逃げないと」