Neetel Inside 文芸新都
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「五十年前にこの施設に匿っていた十万人弱――、
 そして私が避難させ匿った十二万二千三十三人――だ」

 タクヤの手からふっと力が抜けた。
「つまり、七十万の半分を失った……だと……?」
 膝をつき、頭を抱える。
 何故だかわからないが、タクヤはまるで半身を失ったかのような喪失感に襲われた。
「すまない……美少女だけを匿うのが難しすぎた。
 選定に時間をかけている間に被害が急速に増えたんだ」

「――ぼく、いや、俺は……」
 その時、大きな揺れが足元に走った。
「またか……」
「なんだこの揺れは」
 地下にしては大きな揺れだった。
「この御剣市が外の世界と内の世界とで隔てられているのは分かっているか?」
「ああ、俺が望んだことなんだろう」
「しかし、美少女を全て取り込みきったところでこの世界は外から入ることは出来ても内から出られない。
 厳密に言うと、この御剣市の物は御剣市の外へ出られなくなっている状態のようだ」

「それと地震とどういう関係が?」
「無理に出ようとすれば、弾かれるだけでなく、
 御剣市の定義、美少女集結が崩壊してしまう。
 そうなれば、当然今の御剣市自体が消えて無くなるのだ」

「その影響の地震だというのか? だとしたら、外で出ようとしているのは誰なんだ?」
「それは――」
 亜夕花はキャスターチェアに腰掛ける。
 同時に部屋が赤いライトによって点滅する。
『緊急事態発生(エマージェンシー)、緊急事態発生』

「どうやら先の地震でどこかの回線が壊れたようだ。何、すぐ直る」
 そう言って亜夕花が外へ出ていく。
 しかし、亜夕花の顔は振り返ったと同時に青ざめたものへ変わった。
 タクヤの後ろで、ぶっしゅうと音が響く。水とガスが抜けたのだ。
 むわっとした腐臭が鼻についたと思うや否や、眼前に白い煙が立ちこめた。

「なんだ、何が起きた」
 ふわりと立ち上がる二つの影。
 いつの間にか亜夕花が窓越しに何かを叫んでいる。緊急用の防護壁が張られたのだ。
 タクヤは駆けだした。急いで外に出ようとするも、その壁は開かなかった。
『緊急事態発生、緊急事態発生』

       

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