「綾女は?」
「今日は生徒会で遅くなるみたいです」
凜々の表情が少し翳るが、それも一瞬だった。
「今日はトランプでもしないか」
他愛のない談笑の末にタクヤは日も暮れた頃に一室を後にした。
「ねえ、兄さん」
「なんだ」
麗未が小さくなって妹になっているとは思わなかったが、これはこれで違和感がない。
「やっぱり兄さんが、凜々さんに会いに行くのって気があるからなの?」
「いや、違うな」
「え?」
タクヤはこんな人のいる中で話すようなことでもないと思ったが、
自分に言い聞かせるように言った。
「何かこう、確かめたくなるんだ、時々」
「ときどき?」
「いや、いつもかな」
おどけたように言うと麗未は笑った。
毎日友達の見舞いに行くのは良いとしても、
本来は女友達の姉など毎日行くような事でもないはずである。
「あはは、それ嘘でしょ」
「どれが?」
「気がないっていうの。兄さんはいつでも誰にでも気があるんだよ」
「……」
そうかもしれない、とタクヤは思う。
でも、だからこそ自分の中で意義のある存在を区別しなければ人は疲弊してしまう。
何気なく見た先に『奥川優奈』と書かれたプレートを見た。
――美少女70万人vsタクヤ 完。