「はい、秋田県の方言です」
「いや、ちゃんと標準語で頼む」
「わかりました」
一見融通が利かないように見えるが、これも彼女なりのジョークらしい。
いや、全く理解は出来ないんだけど。
『それでは、今日のニュースです。御剣市は男性の少なさに悩まされているようです。
人口の99.99985%、およそ80万人……失礼しました。
110万人が女性となっている御剣市では今日、大規模な異住登録が認可された模様です』
――カラン。
ジャムを掬っていたスプーンが僕の手から皿の上に落ちた。ナミはじっとニュースを見ている。
「ああ、そうか――」
「……?」
ともかく昨日、力を使ったんだった。でも、何か妙な胸騒ぎがする。
「ナミ、今のニュース、どう見る」
「失礼な話し方で良いのですね?」
「ああ、程ほどに頼む」
「はい、では――」
ナミは身体維持のための食料摂取を中断して正しくタクヤに向き直る。
「普遍的、かつ客観的に評価するならあり得ない。
世界でも人口の99%が女性の都市など存在しないからです」
「じゃあ、そこから導き出される結論は?」
「タクヤの力」
「正解だ」
僕はスプーンをジャムの瓶に投げ入れて肩を竦めた。
「昨日、何故私がこの服を手に入れたか不可解でしたが、そういうことでしたか」
ナミは自分の服を摘んだ。
「僕は美少女を限定したつもりだったんだけどね」
「む――私のフェイステクスチャは世界の美少女をモデリングベースに5300パータンの中からタクヤが選んだものですよ。
どう考えてもそれが美少女でないわけがないです」
少しムキになって答えるナミは思いとどまった様子で小首を傾げる。
「けど、そうなると私が編入するのはオカシイですね。人間ではないのに」
「そんなことないよ。これからが戦いなんだ。ナミにはサポートを頼む」
「はい――タクヤ様がそう仰るなら」
従順なところは変わっていなくてほっと一息つく。
「お、おい。また固い敬語になってるぞ」