Neetel Inside 文芸新都
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 しかし、タクヤは身支度を終えて何かを忘れていた。
 それに気がつくのは街に出てからそう長い時間を必要としなかった。

「まて……」
 道行く人、全てが女性というのはいくら色情魔なタクヤにとっても、
 良薬多すぎれば毒というように酷いめまいを起こしそうだった。
 街に溢れ返る匂いは女特有のものだ。
 人間臭さというよりは香水やコロンの匂いと女性の匂いが酷く感じられる。
「なんだこのイフ世界……くっ、正気を保っていられそうにない……」
「目を瞑ってはダメ。考えていることが具現化する恐れがあります」
 ナミはタクヤの腰に細い腕を回して背中をさする。
 交差点まで歩いてくるといつもいるはずの柊さんがいない。
 それが何故かということすら考える気力が沸かない。むくむくとわき上がるのは劣情に他ならない。
 コンビニからは男性用品がもう処分され始めているのか、段ボールがいくつも出てくる。

「ナミ……。僕は『美少女が男性と入れ替わるように移住する』とイマジンしたんだ。
 客観的に今の現状を説明してくれないか」
「はい。効果がどの程度の範囲、又は影響力を持って及んでいるかということでいいの?」
「ああ……」
 ナミは目を瞑り、高速思考演算で様々な定義を処理する。
 思考はすぐに停止し、ナミが落ち着いた口調で語り始める。
「まず第一にイマジンクリエイトは顕現を早期化するデフォルト機能がある。これはいい?」
「ああ」
「第二に顕現するに足りない部分はタクヤの潜在意識、認識から代替えするっていう補助機能があることもいい?」
「うん、だんだん思いだしてきた」
「そして、第三に矛盾しそうになると回避するために様々な副次的な条件、
 顕現が派生してしまうこともいいよね」
「ああ……」
「私の思考結果では美少女に年齢制限、人間的概念を定義しなかった為、
 タクヤの潜在認識と結びついている可能性があると見える。
 今回の場合、街の活動が停滞しないように世界側が今ままでの男性の仕事を美少女が引き継ぐ形で顕現したんだと思う」
「そこまでは予想通りなんだが……」
「そして、これが最も重要なんだけど
 ……多分彼女たちの中には人間の領域を越えた能力を持った人がいる可能性が高い」
「……どういうことだ?」

       

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