Neetel Inside 文芸新都
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 何故こんなことを知っているのかというと、かくいう僕は生徒会長を務めている。
 そしてもちろんこれは生徒会長の特権を行使して得た情報だ。
 大概の男子はこの話しを聞くと尻込みする。
 だが、しかし彼女自身、手の皮が厚かったり、耳の表面がタコになっていたり、
 足の皮が剥けていたり、体が擦り傷だらけだったりということはない。
 去年のプール授業で僕の従僕といっても女の子だが、
 彼女たちによればそういう情報を得ている。
 頼めば写真も撮ってくれるだろうが、何しろ金ありきの関係なので正直危ない橋を渡っている。
 詳しくは追々話すとしよう。

 僕は下駄箱に靴を入れ、上履きへ履き替える。
 この間、女の子からの挨拶四十三。野郎からの挨拶が四十。問題はない。
 今の僕の立場は至ってグリーンだ。しかし、中学三年になった今年はそろそろ動いていかないとまずい。
 僕の大いなる野望『美少女ハラマ』は18歳までに完了しなければならない。
 残り三年で70万人の美少女を選定する。この作業は尋常ではない。一年で23万人は捌く計算だ。
「ちっ」
 自然とイラ立つというものだ。
 僕は鞄を机の横にかけて着席する。
 じっとしていると気がおかしくなりそうなのでWAPPED PASSAGES という本を取り出す。
 いわゆる洋書と呼ばれる英文でしか書かれていない本だ。

「タクヤく~ん」
 この声は天水さんだ。童顔で男子受けはいいが、甘え上手すぎて隙を見せるとすぐにたかられる恐るべし女だ。
「なんだい、天水さん」
 無論、僕の『美少女ハラマ』にこの手の女は入らない。
 判断基準はご想像にお任せしたいが、正直言って可愛ければいいというほど僕は考え無しじゃない。
 女として価値のある者を落としてこそ、僕の中では極上の喜びとなるのだ。
「ジュース傲ってほしいなあ」
「百五十円だな」
 ポケットから百五十円を取り出して天水に手渡す。
 2011年から消費税は十パーセントになったおかげでただのジュースでも百五十円する。
 言ってることがやってることと違うって? 何いってるんだ?
 僕は誰にでも好かれる好少年だ。信じられない世の中でも、たかだか百五十円で目くじらを立てたりはしないさ。
「わ~い、ありがとタクヤ君」
 全く感謝の意がこもってない言葉を逆にありがとうと言いたいくらいなワケで、
 水を得た魚のように去っていく天水さんは他の男子にも何かをねだっている。

「タクヤ先輩? ちょっといいかしら」

       

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