「……」
ナミはタクヤとの関係が公になることを想定した場合の動きにくさを考えたのだろう。
美少女ハラマの計画に万が一支障が出れば、ナミと言えども切り捨てなければならない。
ナミはタクヤの野望を優先し、嘘をついた。
「そ、そうなんだ」
「そう? 随分親しい感じがしたけど」
「そ、それじゃ鞄置いたらすぐ手伝うから。えっと、列を乱さないように監視してればいいんだよね?」
「はい。それと転入願書を回してますから書き終わった人がいるようだったらもらってあげてください」
「了解」
タクヤはナミを残して園内へ入る。
見事に職員室まで並んだ列の波をかいくぐるとタクヤは色々な視線をぶつけられた。
「え? 何、男の子?」
「なんかこの街に来て初めて見たんだけどぉ」
「可愛くない?」
タクヤはついつい目が女生徒の下半身にいってしまうのを自制して階段を駆け上がった。
教室に入ると女子だけが着席している。中にはもう既に知らない女生徒も何人かいて、
タクヤはとうとうやってしまったんだという実感がふつふつとわき上がってきた。
鞄を机の上に置いて唖然とする少女達を尻目に教室を後にする。
「え? てっきり男子はみんな引っ越したんだと思ってたんだけ――」
女生徒一人の驚きの声を扉で遮ってタクヤは階段を下った。
「あ、ほらほら、男の子だよ」
「おー、これは珍しいじゃん」
正直……耐えられないっZE! つか、バレないか?
僕一人がこの街で唯一の男って何か意図的なものを感じないか? ハーレム的な意味で。
しかも、どいつもこいつも一級美少女だ。
中には品行方正、男性なんて生き物知りませんみたいなオーラを放つ淑女も沢山いる。
どこの箱娘なんだ……。それにこの数、もしかして他の学校も凄いことになってるんじゃ……。
「あ、タクヤ先輩」
「どうしたのさ」
「べ、別に頼まれただけなんですけど、ナミってさっきの人が気を付けてくださいって
……どういうことですか?」
「さ、さあ……」