しかし、そこをうまく処理するのがこの力ではなかっただろうか?
概念操作はできない、当たり前の事実を今になって気づく。
朝陽さんは何かに気がづいたようにタクヤを見た。
「ちょっと……どうしてこんなことに気がつかなかったの――街に男の影が一つもない!」
凄い剣幕で朝陽さんは僕を睨みつける。
朝陽さんの認識をイマジンクリエイトの力で変えるべきだろうか。
「え、僕は知らないよ」
「タクヤ先輩、あなたの仕業なんですか。日頃から女の子を見る目が怪しいと――」
仕方がない。イマジンクリエイト発動。
『朝陽鈴音はこの件を忘れる』
「なに目なんか瞑ってるんです?」
……?
「なんとか言って。この街はどうなっているの?
転入生412人、編入生116人全員が女子で、528人男子全員で転校なんて常識からいってあり得ない」
「やだな、朝陽さん。どうしてそれで僕が原因なんだ?」
――何故効かない? イマジンクリエイトは絶対のはず。
「あなたがこの街でただ一人の男だからでしょ」
「どうして朝陽さんにそんなことがわかるの?」
「…………どうしてかしら」
「おかしいよ。僕以外にだって男の子はいるはずだよ」
「いえ、私の記憶ではタクヤ先輩しかこの街で見なかった……。
た、タクヤ先輩しかいないと思えるほどにどこにも無かったわ――男の姿が」
記憶……そうか、記憶も消すことはできないのか。
その時、廊下に響く園内放送があった。
「――全園生徒は廊下に整列し、体育館へ移動してください」
「……」
朝陽さん一人が騒ぎ立てたところで僕にとっての損害は無といってもいい。
それよりも今は、男子と入れ替わった美少女と社会の男性と置き換わった美少女の現状を整理しなければならない。
「ちょ、ちょっとタクヤ先輩、どこにいくんですか?」
「体育館。挨拶しないといけないからね」
タクヤは朝陽を無視することに決めた。是正すべきは朝陽個人ではないと判断したからだ。
僕はもう後戻りはできないんだ――。