Neetel Inside 文芸新都
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『空間を隔離したと――何故?』
「敵に味方はいないという証明。だからこそ、人目を避ける力を一番初めに使った――どうかしら?」
『なるほど、それならばこの状況で真っ先に観測不能になったのも頷けます』
「このことは鏡華も知らないでしょうね。あの子は少しずつ理解していくタイプだから」
『瑞華さまは――どうされるんですか?』
「相手は男なんでしょう? それに味方はいない。
 となれば、そう、恐らく側近にいたこの女が唯一の仲間なんでしょうね。F-88にコンタクトを取って頂戴」
『F-88ですか? しかし、あの方は苦手だと……』
「そんなことも言っていられないでしょう?
 この世界はおかしい、それだけは解る。
 その答えを知っているのはこの人しかいないんだからそれを問い正しに行くのよ」
 闇夜に舞う一輪の白い花。ワンピにニーソックス、ローズブリット、
 瑞華と呼ばれた少女は長い髪を舞わせて一人、街明かりの中へ消えていった。

「タクヤ、訪問客です」
 ナミの流麗な声が僕の耳に響く。
 僕は黒服の少女の治療を終え、地下室を上り玄関先へ行く。玄関からは見えない位置でナミが待機していた。
「――はい」
 扉を開くとそこには柊みつきと朝陽鈴音の姿があった。
「ちょっと、今いいですか」
「え?」
 ぐいと引かれる腕。僕は少女独特の力加減に興奮した。

 住宅街を闊歩する三人。公園の一角で朝陽鈴音は口を開いた。
「あの子に何をしたんですか?」
「あの子って?」
「とぼけないで、タクヤ先輩、いいえ、タクヤ。私は見ました。
 ちゃんと答えないと警察に突き出しますよ!」
「タクヤ君……」
 柊と朝陽は対照的な面持ちで僕を見る。何か嫌な予感がする。
 僕は公園の死角にナミの気配を感じ取り話しを続けた。
「二人ともいつの間に知り合ったんだい? 見たって何を?」
「黒と白のスカートの子ですよ。背負って帰ったでしょう?」
 どういうことだ? 隔離空間は完璧のはずだ。いつ解けた?
「誰かにそう聞いたのかい」
「いいえ、この目で見ました。家に連れて帰るところまではっきりとです。警察を呼びます。いいですね」

       

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