朝陽は制服のポケットから携帯を取り出してコールを掛ける。
しばらくして巡回中の警官が駆けつけた。もちろん、美少女だ。
「私を呼んだのは誰ですかぁ~?」
公園の入り口から緊張感のない声で恐る恐る入ってくる少女。僕の脳内はデフォルトで彼女の身体測定を行う。
――94、60、86。比率0.70。演算終了=(結果)黄金比率。
「私です。あの男が少女を誘拐したんです」
「あらぁ、それはいけませんねぇ。すぐ自首してください~」
タクヤは睥睨する。朝陽はもう知るところまで知ってしまった。どうするか?
施設の一員として取り込むのは容易いが、今は人数が多い。そしてこの婦警は底が見えないのだ。
「断ると言ったら?」
「いいえ、そんなことはできません~。あなたは悪人の眼をしていますからぁ~」
おもむろに拳銃を引き抜く婦警はそのまま銃口をタクヤに向ける。
「え、それは流石にやりすぎじゃあ……」
「やれるものならやってみるといい」
婦警は迷う素振りも見せずにトリガーを引いた。閃光と火花が散った。
「ちょ……」
ごおおんという反響音の後に朝陽と柊は瞑っていた目を恐る恐ると開いた。
「あっ――、あぁぁ……」
かちゃりと先に音を立てたのは美少女警官の方だった。
銃を手から落とし、内股になりながら甘い声を出している。
「いい感度だ……」
銃弾はタクヤに触れてすらいなかった。
弾頭がどこへいったのかはわからないが、タクヤは無傷のまま指先だけをイヤらしく動かしていた。
「俺が悪人の眼だと言ったな?
お前は人の善し悪しが眼で解るのか? ならば、この状態で読んでみるといい」
タクヤはおもむろに指先をつまむようにする。
「はあぁぁああ――」
柊と朝陽はその婦警の変貌にただ目を丸くするだけであった。
「そんな――ここまでリアルに感じて……?」
少女はだらしなく口から唾液の糸を引かせ、目は虚ろになり、身をよじるようにしてひくりひくりと痙攣しだした。
「馬鹿だな、俺の眼を見るってことは力の影響を強くするだけだ」
「え? アっ、来る――何かが、来ちゃうぅ――?」
「あばよ」