「……お見事」
現れたのは車いすに乗った少女ときつい目をした美少女だった。その後ろから拍手の音が鳴り響く。
その異様な様子はすぐに理解した。
「あの子、腕が――」
車いすに乗った少女は双眸を布で覆い、両腕が無かった。
「古今東西、この能力を得てからはここまで裏の人間(こちらがわ)が叩かれるとは思いませんでした。
何か――要求があるなら呑みましょう」
傲慢な態度で後ろの女がそう言った。
「この組織で処女を奪ってる悪趣味女郎を知っているか」
女はくすりと嗤った。
「もうとっくに倒したのではなくて?」
リノリウムの床に倒れた少女達を指した。女は腕を降ろして続ける。
「ここにいる子は皆、覚悟が必要です。それは乙女の純潔よりも重大で孤高、
そして何ものにも変えられない気高き覚悟『死の覚悟』。
その覚悟を見せて貰うとなれば、操を自ら散らすこともありましょう」
窓から入る夕暮れ時の日射し。
少し薄暗いこの建物の中で、タクヤは一つの結論を叩き出していた。
「つまり、最後に残ったお前ら二人はそのことを知らないのか」
「元来、我々の組織は外部に悪影響を与えたりするようなものではありません。
ましてや、組織に入るために乙女の操を引き合いに出すなど、
そのような蛮行、少なくともここの彼女達はなさらないでしょう」
結衣が不安そうに女とタクヤを見る。
「勘違いだったってこと……?」
「いや、違う。そんな行為があったこと、生み出してしまったということは結局こいつらの責任さ」
女は表情一つ変えずに車いすの後ろで佇み、
「そうですね……あなたの言うとおりです。
しかし、私たちとしてもあなた方にハラカラをやられたという結果しか残らない。
これは、ただで返すわけにはいきませんね」
女はゆっくりと三人に手をかざした。
『能力吸――』
「待って」
初めて車いすの少女がその可憐な声を上げた。
「……そう、いいの?」
女は何か諦観したように双眸に掛けられていた布をほどいていく。
美しき容貌に閉じられた目蓋がゆっくりと見開いていった。