Neetel Inside 文芸新都
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 クラスを確認すると、ナミとタクヤはどうやら同じクラスらしかった。
 昇降口まで来て、ナミとタクヤは違和感に気がつく。
「下駄箱からゴミが溢れている?」
 見方によってはラブレターだろう。
 しかし、一人分の下駄箱サイズは決まっており、
 その容量を超え、まき散らされた手紙はゴミ箱をひっくり返したように山になっていた。
「誰の下駄箱だよ……」
 自分で言ってからすーっと冷たい空気が背中に降りるのがわかった。
 間違うことなく、その下駄箱の元凶はタクヤのところだった。
 幸い登校初日で上履きは持参してきていたが、こんな状態の中に靴があったらと思うとぞっとする。
「ナミ!」
 タクヤはナミの下駄箱を見に行った。しかし、そこには既にゴミ袋三つが積まれている。
「なんでしょうか」
「あ、え、いや――俺の方も片付けてくれると助かる」
「わかりました」
 若干体積で負けたタクヤは無意味に悔しいと感じてしまった。

 それからというもの教室に向かう途中で声をかけられた数はおよそ32回。
 正直これは生徒会長を務めていた時よりも多い。はっきり言ってシャレにならない。
 野郎が野郎に愛想を持たれるなど、吐き気以外の何ものでもないだろう。
 幸い朝の一件が牽制球となったのか、ナミと同じクラスのおかげで、男子の意識も遠慮があった。

 もしこれが違うクラスだとすればその日のうちにタクヤは視線だけで孕まされること請け合いだ。
 ホームルームが終わり、男子のなめ回すような視線において萎縮しているタクヤに、誰かが話しかけてきた。
「タ~クヤ君」
 それはかつて、まだ『普通の世界』で同じクラスにいた性的対象外、天水萌々子であった。
「な、なんでおま――」
 女の姿で『タクヤ君』などと呼ばれるのもむかつくが、萌々子はあの時と全く変わらず女の姿でそこにいた。
「お前、なんでここにいるんだ!」
 思わず上げた叫声は嬌声のように艶めかしかった。
「ひっどいなあ。私は学生をやめたつもりはないよ~」
「違う、もっと言えば、何でお前は『女』なんだ?」

       

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