ナミは結局俺をどうにかしようという行為には至らなかった。
それだけ、彼女(彼)の理性は相当強いということだろう。
現状は結局どこまでいっても美少女どころか女子すらいなかった。
それでもたった二人のために女子トイレが存在することは疑問だ。
タクヤが亀甲縛りから解放された後、気がつくと男たちは何処かに消えていた。
何食わぬ顔で校舎へ戻る俺とナミ。
昼休みになると三人で学食へ行くという話しになった。
三人とは、ナミと萌々子を入れた三人である。
「いやあ、おごってもらちゃうなんて悪いねえ~」
「おごるとは言っていない。これは取引」
ナミは萌々子の珍言に淡々と答える。
「私が食べたいのはCランチだからよろしくう」
「ふざけないで。物乞いのくせに一番高いのを注文するとか、常識を識りなさい」
「それをお前が言うのか、ナミ」
Cランチ1250円。あり得ない……、こんなのは誕生日に『自分へのご褒美♪』などと言いながら注文する痛いヤツだけだ。
俺の隣ではおおよそ学食とは似つかわしくない豪華な料理が並び始める。
「結局買ったんかい!」
「Aランチのお金をくれというので、渡したらあのようになりました」
萌々子は上機嫌で箸を取った。
「いただきまーす」
周りにごった返す男子の軍勢をまるで眼中にもないかのように食事を始める萌々子。
ナミと俺はサンドイッチとうどんというチョイスだが、並んで食べ始める。
「ああ、そうだナミ」
「なんでしゅ、しょうか」
「もう気づいてると思うが、女がいない以上は好きなように振る舞ってもらって構わない」
ナミは頷いた。
「ですが、いい加減この世界から脱出する目途を立てないといけません」
「そうだな」
放課後――。
「それじゃ、今日も一緒に帰ろうかぁ」
ナミと俺が並んで昇降口から出ると萌々子が後ろから現れる。