Neetel Inside 文芸新都
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「信じねえ。こんなの夢だ……へへ――」
 それは藤野から手放したわけではなく、藤野の手から抜け落ちたのだった。
 周りの男が各々に叫びながら全員消えたところで、
 私は痛みがなく、折れた腕も服装も元に戻っているのを識る。
 男がいなかったことにでもなったのか。

 しかし、心の中は何も変わっていなかった。何かが壊れたまま。
 それから何処をどう帰ったのか覚えていない。
 奴らの持っていた明かりの一つを拾って帰宅する。
 見かけた男は全部消した、文字通り。
 
 それでも足りなくて、色んな家の中の男たちの家族を無くして来た。
 子供や母親は残しておいて、男は消し去る。
 馬鹿みたいに泣きながら消えていく家族は見ていて滑稽だった。
 次はどんな暖かい家を凍えさせてやろう。いつしかその感情は愉悦に変わっていた。

 いつしか辿り着いた暗いリビング、そこで私は気がついた。
「…………私の家だ」
 手に残った最後の明かりが消えた。
















 ――あ、消えたいって思っちゃった……。

       

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