「普通に空いてるって……これ空き巣じゃん」
「むしろ、好都合だな」
タクヤとナミはずかずかと敷居をまたいだ。
「あ、ちょっと!」
しかし意外なことに萌々子はリビングに横たわっていた。
「死んでる……?」
「寝てるだけですね」
ナミは長い髪を片方に流すと萌々子の前へしゃがみこんだ。
「起きて下さい」
萌々子の方を揺さぶるナミを見て結衣はたじろいだ。
「ねえ、そいつ起こさないでやっちゃわないの?」
「あのなあ――」
家で殺す、倒すの選択肢はないとあれだけ話したのに結衣は萌々子を倒したくて仕方がない素振りを見せる。
「ん、んぅ……」
それは仔猫のような仕草でゆっくりと起き上がった。ナミの顔はスルーしてぐるりと辺りを見回した。
「た、タクヤ君っ?」
「や、やあ」
跳ねるように起き上がると萌々子はショートの髪を逆立てて紅潮した。
「やだ、なんで?」
「なんでって、ちょっと話しをしにな」
――――。
「つまり、ここは現実世界じゃないの?」
「そういうことになる。だいたいこんなに男だらけなのはおかしいだろ?」
ああ、と言った調子で萌々子はおどけて見せた。
「そしてお前の力は萌々子、みんなを元の世界に帰すことができるんだ」
ところが萌々子はそれを聞いても何も反応しない。むしろ、冷静だった。
「そっか……」
遠くをみるような目で萌々子は窓の外を見やった。
「頼む」
「じゃあ、後ろの二人を帰せばいいんだね」
「「え?」」
ナミと結衣は唖然とした。
「いや、俺も頼みたいんだが――」