「何がおかしい、もう動けないはずだ」
みつきの体に果たしてそれで通用するのかどうかはわからなかったが、
体が不変の創造効果を得ているのなら、もう微動だにできない状況であろうと思われた。
いくらこの強化型ステンレス線が像でも契れない代物でも今のみつきに長く通用するとは考えにくい。
「…………(ナミ、早くして)」
一方でナミは不変の創造主である鈴音をなんとかしなければならなかった。
一言で言えば鈴音の動きは初心者。対してナミは知識である武術や体術がそのまま応用、投影できるため制圧は簡単に思われた。
しかし、ナミは鈴音に触れることができない。
出来ているのは辛うじて結衣たちの戦いに鈴音を介入させないことだけだった。
「空間の光を屈折させて不可視にさせることができるなんて、この力がなかったら勝負にならなかったわ」
現に鈴音の両眼にナミの姿はなく、また結衣たちの姿もなかった。
――タン、タン、タン。
何処からともなく繰り出される攻撃に鈴音の体はびくともしない。
ナミの一撃は全て急所への一撃だというのにだ。
「……やはりだめですか」
一切を受け付けない鈴音の身体。ナミは諦めた様子で姿を現した。
「…………」
「やっと諦めたの?」
「ええ、あなたとは元から戦う必要などなかったようです」
「――へえ」
鈴音の口元がつり上がる。
「どちらにしろ、あなたには攻撃の手段など存在していない。倒せない敵は倒さないだけです」
鈴音はもう歪む顔を隠さず、ナミに向かって走り出す。
「じゃあ、あなたは倒されるのね」
『不変の創造(エターナルクリエイト)――』
ナミに回避の選択肢を与えないため、鈴音はナミの体の周りに不変を施す。
それと同時に鈴音は異変を感じた。
「な――くっ、はっ――?!」
後数歩というところで、鈴音の身体はナミの足元に崩れた。
「あ――、うっ」
充血していく目は必死に何かを求めてた。