結衣は消耗戦を覚悟した。
ナミが来ない今、自分に出来ることは時間を稼ぐことくらいだと思ったからだ。
からからとナイフが地面を伝って行き、何かの影に当たった時だった。
「こんにちは」
二人の視線がまるで、幻覚でも見るかのように見開かれた。
少女は初めからそこにいたように、ナミを後ろに従えて悠々と構えていたからだ。
「どういうこと……?」
結衣の言葉も虚しく、響いたころ少女がナミに落ち着いた態度を見せる。
「――ナミ、あの二人を制して」
落ち着いた口調、とりとめのある物言いによって、その影は動いた。
ゆっくりと、そして流麗にナミは両手を二人に向けるとおもむろにそれを発動する。
「――加圧、500kPa……」
きぃんという耳鳴りと共に肩からのめりめりという音が突然響いた。
そこで結衣の意識は途切れる。
「……」
大気が凝縮し、蒸し上がるような暑さが二人を襲う。
「……く、あぁっ――」
真っ先に倒れたのは結衣だったが、みつきは膝を突きながら唸っていた。
「凄い子……、ナミ」
「――twice」
ドンッと地面のコンクリートが鳴った。そこでみつきはくしゃりとその体を折り、ついには沈黙する。
そして事態はこの突然の乱入者に任されることとなった。