第十三話「シャッフル」
「きゃああぁっ――」
鏡華の肢体が空へ投げ出される。
タクヤのイマジンクリエイトによって鏡華の攻撃が弾かれた瞬間だった。
「くぅ――」
じたばたと暴れる白磁の肌にタクヤは馬乗りとなり、手の首を抑え付ける。
押された部分が赤くなり、鏡華の抵抗がわずかに弱まる。
「諦めろ、お前の負けだ」
「――っ」
鏡華の横髪が切なくたゆたった。
唇と目蓋が強く閉じられ、観念したといった様子でタクヤのなすがままになっている。
「こいつを飲ませてみよう」
傍観していた亜夕花がタクヤのそばにきて言った。
「それは――?」
亜夕花の手の平にあったのはカプセル錠剤だった。
タクヤが最初に飲んだものとは違うようだったが、似たようでもあった。
「飲んでからのお楽しみさ」
口元を緩めて錠剤を薦める亜夕花に当然、鏡華は難色を示す。
「お願い、言うことは聞くからそういうのは、やめて……」
潤んだ瞳で懇願する鏡華であったが、タクヤの目にはそれもただのスパイスでしかない。
「飲むんだ」
口に放り込まれた錠剤を鏡華は一筋の涙と共に飲み下した。
「んくぅ」
鏡華に変化は現れない。
むしろ、鏡華の体は弛緩していき、タクヤが手を放しても問題はなさそうであった。
「媚薬か?」
「半分当たり。流石に女を抱き続けると、そういう変化には鋭くなるのかもね」
「ん、はぁっ――」
熱い吐息を流して、鏡華は寝返りを打った。それは、一種の抵抗のようにもみえた。
「もう半分の効果は?」
「インプリンティングという言葉を知ってる?」
「刷り込み?」
「そう、ひよこが親を認識する本能のようなものなんだけど、
これはそれに似たような効果で、人間に応用したものさ」
「つまり――?」