早起きして、母の朝食作りを手伝い、父に見て貰うべく席に着いた。
「お父さん、おはよう」
父の姿を見るなり、みつきは髪留めをした姿でそう言った。
「ああ、おはよう。よく似合っているね」
「うふふ、ありがとう」
みつきの身長からは父の顔に一瞬影が差したことなど、よくわからなかった。
ただ、みつきはこの時初めて父に受け入れられたのだと錯覚する。
「おい、なんだよこの髪留め」
真っ先に目をつけたのは例の男の子『たち』だった。
彼らは一つのグループとなっていた。3人の男のたちがみつきを取り囲む。
「やだ――、触らないで……」
すぐにそれがみつきの大切なものだと理解したのか、男の子たちは今までにない、その怯えた目をみて笑った。
「やーだよ!」
そう言ってちょんっと触る。
「いやぁ!」
「「あははは」」
その反応が面白いのか、男の子たちは盛り上がった。みつきが涙を流すことも無視して。
「やめろー!」
突然みつきとの間に入ったのは、見たことのない男の子だった。
「んあ、あんだよお前」
「この子泣いてるだろ、どうしてそんなことするんだよ」
「お前には関係ないだろ。来たばっかのくせにナマイキだぞ、たくや」
「なにを!」
次の瞬間、ばこっという軽快な音がした途端、みつきの髪留めを触った男の子の一人が尻餅をついた。
「おまえ~、やったな!」
いじめグループの一人が反撃で繰り出した拳を、目の前の子は子供とは思えぬ動きで躱し、懐に膝を入れた。
「ぐゅはっ」
今まで聞いたこともない声を出しながら、男の子は地面でもんどり打った。
「ゲホッ、ゴホッ。うわぁぁん、いたい、いたいよぉ~!」
その尋常ならざる叫び声に慌てて先生が駆けつけてきた。
「一体どうしたの!」
先生に問い詰められ、はっきりとたくやという子は言った。