話しによると朝陽鈴音には朝陽昴という弟がいたらしい。
それがある日、忽然と姿を消した。
最初は昴のことも忘れていた鈴音であったが、街の様子を見ているうちに違和感を覚えていく。
そして、タクヤが目の前に現れた時、鈴音の力は記憶とともに不変の創造として顕現したのだった。
「俺は取り戻そうなんて思っていない」
「無茶苦茶よ、あんた自分が何しでかしたかわかってるの?」
「俺だって好きでこの現状を作り上げたわけじゃない。ただ、うまくできなかっただけだ……」
一番ベストな形はタクヤの元に美少女たちが次々に訪れるというスタイルだろう。
しかし、今のタクヤにそれは叶わない。
掌握するには説得か強制かそれに近い行為が必要だ。
タクヤの中では既にこれが闘いに他ならなかった。
そして鈴音の協力がなければ、タクヤは一人でいかなければならない。
不変の創造がなければそもそもこちらには時間の創造に対抗する手段がないのだから……。
二人は和解することはできず、タクヤは今、一人で敵地に赴いていた。
「一人で堂々と現れるとは、良い覚悟だ」
「……」
二人は示し合わせたわけでもなく、そこにいた。
「あれでも立派な住まいなんでね、押しかけられて破壊されるのは御免だ」
「だが、解せぬよ。何故、我らの位置がわかった」
和服の女は簪(かんざし)に手をあてるようなしぐさをして言う。
「勘だ」
「ほう……」
「なあ、お前の目的は何なんだ?
こんなことをしても世界は元には戻らないし、俺を殺すことに何の意味がある?」
「大ありだよ。私はずっと一人で生きてきた。
来る日も来る日もどうでもいい人間共と時間の無駄ばかり――
だが、この力があれば一人じゃなくていい、この力さえあれば、私は、皆に受け入れられる!」
「ナミ、みつき」
二人は虚ろな目をしながらもタクヤの眼前に立ちはだかる。
「貴様を倒せば、私にもはや弊害などない。この世界は悉く私のモノとなる」
白唇がそう豪語した直後、ナミとみつきの身体が跳躍する。
「大気の――」