Neetel Inside 文芸新都
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 ナミが両手をさしだしてタクヤへ標的を定めると同時に、タクヤは何かを呟いた。
「あ……つ……」
「?」
 ナミはその行動を直前で停止し、頭を垂れるように停止した。
「はっ――」
 ごう、と空気を巻き込みながらみつきの拳がタクヤの横をすり抜けた。
 トラックが駆け抜けたかのような風圧がタクヤの髪をわさわさと靡かせる。
 なんとかたたらを踏んで留まるが、第二派の蹴りはイマジンクリエイトを使わざるを得ない猛突だった。
『初期化概念――(イニシャライズ)』
 タクヤに触れるものの威力をゼロにするこの創造は不変とは違い接触のみを無効化する。
 ふっと音もなくみつきの脚は止められ、続く連撃をもタクヤは軽々と受け止めてみせる。
「馬鹿な、ナミはどうした。何故動かないのだ」
「無駄さ、こういう状況を予め予期していたナミはそういうシークレットコード(暗号信号)を備えていただけの話しだ」
「は、何がシークレットコードだ。それではまるで人間ではないかのようではないか」
「ナミは俺が唯一自分の手で作った女だから当然だろ」
「な、に――」
 黒の長髪が白磁の肌に翳り、その少女は地肌を一層青黒くさせた。
「お前は『時間』を創る。俺は『想像』を創る。お前のいるこの世界だって、俺の想像でしかないんだぜ」
「たわけたことを……私の力は私だけのものだ! ふふ、そうだ。お前にも使ってやろう――そうすれば……」
 しかし、それがタクヤに影響を及ぼすことは無かった。
「……」
 タクヤはこの時、時の創造が自身に影響を及ぼすのかどうかという点において全く確信がなかった。
 ただ、唯一判るのはその力によって自分が死なないということだけである。
『イマジンクリエイト――』
 
 一方、タクヤの家では艶めかしい声が響いていた。
「け、怪我人に何考えて――やっ……そこっ」
「諦めなよ、誰も忘れることができない君は、
 これから何もかも忘れるくらいの甘い世界に溺れて、あの子の為に生きないといけないのだから」
 亜夕花は鈴音の肢体をベルトのようなもので固定し、内股にパッドを張った。
 そこからは電極が伸び、何やら得体の知れない大きな機械に繋がれている。

       

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