Neetel Inside 文芸新都
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「ち、違う! そういうものは女なら誰だって――ゃ、イタっ」
 タクヤの中指が肉路へと滑り込む。
 そこは大変に狭く、その感覚だけでこの女が未経験であることを確信させた。

 一方、もう一人のタクヤはみつきの攻撃を受けて倒れていた。
「…………」
 それは五分ほどの出来事で、タクヤの肉体は正確にはみつきの攻撃を四十四度に渡って生身で受けていた。
 五体を保てなくなりだしたのは三十二度目の攻撃からで、
 実にそれから十二回の暴挙によってタクヤの肉体はついに有無言わぬ偶像と成り果てたのだ。
 偏にタクヤが能力保持当初に創造していた『超人的な肉体』の効果によって、
 いたずらに命を長引かせたという結果になった。
「……っ……」
 タクヤはまだ絶命してはいない。しかし、それも時間の問題だ。
 『このタクヤ』は既にこの状況下で生きながらえる方法を考えつけなくなっていた。
 健常状態ならまだしも、千尋の『時間創造』を阻む『想像創造』はない。
「凄いわね、私の攻撃にそこまで耐えられるなんて」
「…………………」
 返事はない。ただ、タクヤが自分を創造し、死に至った。
 何を思って自身の命を諦めたのか、今となっては知る者もいない……。
 そして、タクヤの事が切れた頃、ナミが静かに動き始めた。
「タク…ヤ……」
 ナミは新たにダウンロードした『タクヤが直に入力した情報』によって完全にリカバリーを果たした。
 この記憶媒体は、タクヤの脳内に埋め込まれており、タクヤがその生命活動を停止したとき、
 施設の保護や継続判断などをナミがどのような状態にあっても再認識できるように仕組まれたものだ。
 皮肉にもその機能が戦闘で使われることになるとは、あの時はまだ二人とも予想してはいなかった。
「ひいらぎ…みつ、き……」
 片言のように喋るナミが捉えた相手は、タクヤを抹殺した張本人のみつきだ。
「ナミ? どうしたの」
 様々な数字と記号がナミの視界に映っては消える。
 それは感情と理性を制御する全ての機能のトライ&エラー。
 そしてナミは全ての感情を一掃デリートすることで、タクヤの死を受け入れ、
 眼前の障害処理を行うことにした。

       

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