ナミは僕たちの会話には微塵も興味がなかったのか、リビングで膝を抱えてテレビを見ていた。
「ちゃんと椅子に座ったらいいよ」
「……はい」
まるで小動物か何かだ。
近づくと何をしていても必ず上目遣いで指示を待つようにじっと見つめてくる。
そして何故か、亜夕花の言うことは聞かない。
「タクヤぁ……」
厨房の奧から艶めかしい声色で僕を呼ぶ少女の声。
朝陽鈴音。どういうわけか、ツンデレを卒業し、僕の家の居候に――なったのか?
「昨日も思ったけど、ど、どうして鈴音さんがうちにいるんだ?」
しかもなんだか凄くエロっぽい!
「これはささやかなワシからのプレゼントなのだよ」
親父が笑って言う。
鈴音はナミと同じ格好で、僕の腕に絡みつくと頬擦りするようにすりすりと柔らかいものを押しつけてきた。
「朝陽鈴音の地はこっちなのだ。ワシもこの地を引き出すまでには苦労したわ」
「ふふ、タクヤぁ」
ナミの背中が一瞬、殺気立ったように思えた。
「でも、鈴音さんとは一度もそういう関係には……」
「わかっておる。わかっておるとも、『今』のタクヤにそういう甲斐性がないことはわかっておるのだ」
「なんかむかつくけど、じゃあ、もしかして僕の記憶がない頃の僕は……」
「いや? その娘は処女だぞ? 臭い嗅いでみぃ」
確かにまだ誘う臭いが残っていた。
「って――、なんで親父がそのことを!」
「ふふ、何でもお見通しなのだよ。お前の精子でDNA解析もしたしな」
これ以上は聞かない方が良いみたいだった。
「ねえ、タクヤのためにご飯作ったの。食べてくれる?」
酷い有様だ。これが、本当にあの金髪リアルツンデレ、
まず現実ではありえないで賞を僕から受賞された鈴音さんなのだろうか?
「た、食べます」
食卓を囲った僕ら四人は他愛もない鈴音のぶっちぎりデレデレ会話を聞かされた。
亜夕花は鈴音が一頻り満足し、食器を下げ始めたところで僕に切り出した。