Neetel Inside 文芸新都
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短編集(『雨の日、二人で歩く道』更新)
レタス猫

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居間に行くとお姉ちゃんがテーブルの上にたくさんのレタスを広げてもしゃもしゃと食べていました。
そばによってよく見るとレタスは猫の頭の形をしています。

レタスの中に猫の頭があるんじゃなくてレタスが猫の頭の形をしているのです。しかもときどきウニャアと鳴き声をあげます。
 わたしはびっくりしてお姉ちゃんの顔を見ました。
お姉ちゃんは目をギラギラさせて夢中になって食べています。

お姉ちゃんがレタス猫をかじるとパリッというかわいた音と一緒に猫の苦しそうな鳴き声が聞こえてきます。
 なかには逃げようとするのもいて、お姉ちゃんはそれを下駄で、カランコロンカランカランコロンと歌いながらリズムよく叩き、ぐったりさせてから食べました。

 あんまり夢中で食べているので、わたしはお姉ちゃんに「それっておいしいの?」と聞くと「おいしいわけないでしょッ!」と怒られました。
そしてわたしに「でも食べなきゃなんないの。あんたも手伝いなさい」と言いました。

 わたしは正直言って食べたくありませんでしたが、お姉ちゃんが恐い顔でにらむのでがまんして食べることにしました。
 レタス猫の頭に歯をたてるとニャアアという声が聞こえてきて少しかわいそうになりましたが、そのまま思いきってかじりました。
あんまりおいしくありませんでした。しかたないのでソースで味を消して食べました。お姉ちゃんのほうを見るとごまドレッシングをかけて食べていました。

 一時間ほどかけてわたしたちはレタス猫をすっかり食べてしまいました。
お姉ちゃんはわたしに「おつかれさま」と言って笑い、そのまま自分の部屋にもどりました。
 結局あのレタス猫がなんだったのかわかりません。

ただあれ以来おなかの中からときどきウニャアという鳴き声が聞こえてきます。

       

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