Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      



1-2.それが亀頭だなんて知らなかった。

「ギャピー!」

「父さんの肉棒も痛かったんや!亀頭は敏感だから汚い手で触ったりしたらあかん。よく覚えときなさい!」
父は僕を叱るときだけなぜか自分を「父さん」と呼んだ。僕はそういうときの父が怖くて怖くてたまらなかった。
自分のぶつかった壁を見ると血が付着していた。僕は小さな声で言った。「病院に行ってきてもいい?」
「痛いのか?」
「痛い」
「俺はその10倍痛かった」

父はそう言って僕を病院へは行かさず、それっきり肉棒を見せてくれなくなった。

僕は理不尽な怒りをどうすればいいか分からず親友の家へ行った。興奮していた僕は冷たいカルピスを飲みながら彼にこう言った。
「悪いけど亀頭見せてくれる?亀頭というのはつまりペニスのことだけど」

亀頭はペニスではなかったがそんなことはどうでもよかった。
300円で彼は見せてくれた。
僕は驚いた。彼のそれはそう呼ぶにはあまりにも小さく、その小ささといったら果たして本当にそれを肉棒と呼んでいいのかを僕を悩ませる程だった。
いや、もし彼の肉棒を目撃する人が50人いたとすればそのうちの50人はきっとこう答えただろう
「いや、あれは肉棒ではなかった。もし仮に肉棒だとしても私たちの知るそれとは余りにかけ離れた存在だろう」
僕は思わず彼の肉棒らしきものに触れてしまった。彼は驚いて僕を殴った。

「止めろ!人の亀頭に触るなんて、失礼な奴だな!出て行ってくれ!」

僕は唖然としながら促されるままに家を出た。
亀頭に触ってあんなに怒るだなんて思っていなかった。
このとき僕は初めて肉棒と真珠の違いを知り、父や親友に申し訳ない気持ちで一杯になって、だけどどうやって謝ればいいかわからなかった。三ヶ月考えて「父さん、肉棒みせて」と言った。それが思いつく限りの謝罪だった。
「俺の肉棒消えてもうたわ」父は空を見上げたままそう答えた。
肉棒は見せてくれなかった。

- -

       

表紙
Tweet

Neetsha