「見ろ愁夜。ペットがあんなにいるぞ」
「ええ、そうですね。ちなみにペットショップで犬や猫を売っているのは日本くらいなんですよ?」
「ほ~。では、どうやってペットを飼うんだ?」
「それはですね。まずは専門のブリーダーなどに話をして……」
こんなくだらない話をしているのだけどまったくといっていいほどボクの記憶に関する進展がない。
すでに周りは夕暮れ、太陽は茜色に町を照らしていた。
「会長ぉ~。そろそろ帰らないと門が閉まっちゃいますよ?」
「ふむ。もうそんな時間か…………そうだ! 最後に行きたいところがあるんだ。どうだい?」
最後、それを聞けばやっと帰る保障が出来た。
ボクはうなずき会長について行った。
「お~ここだ。ここ」
「…………よりによってボクの家ですか……」
効果音でもボロ~ンとつけたしそうなほどのボロ家。
雰囲気が違う。いまにも幽霊が出てきそうな勢いだ。
ドクン
「!?」
―――そんな……いままでなんともなかったのに……!? 持病……よりもっと酷い……
針が心臓と脳を同時に貫いたような鋭い痛み。
膝が笑う。カクンと音もなくボクは夏の日光を存分に受けた熱いアスファルトに崩れ落ちた。
息が出来ない。
どんどん鼓動が早くなる。
意識が……遠のいていく。
「おい! 愁夜! 愁夜!!」
声が聞こえる。必死なその声に対してボクは大丈夫だと笑えたのだろうか…………