Neetel Inside ニートノベル
表紙

〜Pandora Box〜

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 昨日の夜、慶介が倒れているところを教師が見つけて後の始末が大変だったことをホームルームに知らされた。
 その話をまったく動揺せずに頬杖を突きながら今日も黒板は緑だな、と思いながら話半分に聞いていた。
 でも誰に殴られたとか、ケンカをしたとかそういうボクにとって不利な話を慶介は先生に一切話していなかった。せいぜい暗かったせいで顎をぶつけたとかそういう無茶振りな発言をしていたんだろう。
 慶介は脳の結果を調べるために入院。夏休みに入った後くらいに退院してくるらしい。
 そういえば慶介の親御さんはとっくに他界しているらしいから墓参りをするぐらいで寮にはすぐ帰ってくるだろう。まぁ、部屋は違う部屋になっているだろうな。

 ホームルームも終わり早々に席を立った。
 いまのボクには蓮葉とどうやって仲直りするかとか慶介のお見舞いは何がいいかとかよりももっと重大な謎があった。

 ――会長は、霧梓 燕南はだれだということ。
 
 当然のことなんだろうか三年の教室に行っても霧梓 燕南という人物はいなかった。
 どういうことだ、と考えながら歩いていると、
「瀧澤~! すまないがこれを資料室に置いてきてくれないか?」
 一瞬、瀧澤ってだれ?と思ってしまったがボクの苗字だと遅く理解した。名前が二つあるって何かと大変だな……

 快く了承すると中くらいの段ボール箱一箱を腕に乗せてくる。これが結構重たい。
「断ればよかった……」
 後悔も虚しくなるのでさっさと資料室に向かった。

 資料室の中は物置みたいになっていた。埃っぽく中には何十年も使っていないような地球儀、錆びてしまった教師が良く使うコンパスも見受けられた。
「ここらへんでいいのかな~っと」
 どさっと乱暴に床に置く。すると雪崩でも起こったように他の物が落ちてきた。

「何かの仕掛けですか? これは……」
 まぁ、落ちてきたんだし拾おう。
 『1999年度卒業生』
 簡単な名簿があった。それを拾い珍しい名前があるのかというわけもわからない理由でパラパラとめくり始める。

「加藤恵美(かとうえみ) 川原燐(かわはらりん) 城野瀬智也(きのせともや)……」
 順当に読んでいく。すると見知った名前があった。

「霧梓……燕南……」
 なぜそこに名前があったのかわからない。
 同姓同名なのかとも思ったが苗字が霧梓なんて珍しい苗字も無いだろう。
 わからない……

 チャイムが鳴る。
 授業中でも考えることはできるだろう。

 ――帰ろう。

















 キミはもうすぐ自分が何者であるか気づくだろう。
 記憶が戻るからだ。
 そしてその記憶を止めようとしていたのは私だということも。
 だが、もう止められることはできないのかもしれない。
 運命には誰にも逆らえない。
 時にも。
 全てを知ればキミは苦しむということも。
 逃げるんじゃないぞ。愁夜。

       

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