Neetel Inside 文芸新都
表紙

神々の異世界
デヴィルズバック

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この国にも崇拝する対象は他の国とはなにか違うな・・・。
そんな風に旅人は思った。
偶像崇拝なのだが・・・各家庭や店先で形が微妙に違うのだ。
それ自体はおかしいことではない。
東方正教会などは、各家庭のイコンに向かって祈りをささげる。
マリア像だって大仏さまだって菩薩だっていろいろな種類があるではないか。

しかし、その像にはいままで見てきたものとは明らかに違うものがあった。
角が生えているのだ。
角というのは悪魔の象徴である。
悪魔に反する神にはない代物のはずだ。
もしかしてここは・・・。
「悪魔崇拝?」
そうですよー、と簡単な調子で店主は答えた。
なんとまぁ・・・禁止じゃないのかい?と旅人は聞いた。
「禁止っていうか・・・この国が悪魔によって作られたからねぇ」
驚愕の一言である。アンデルセン神父にぶち殺されそうなこの崇拝者はこうも言った
もっと知りたきゃ王様にあってみればいいよ。
そんな簡単に会えるものなのかね?王様って言うのは・・・

あえた。
すごい簡単だった。
旅していますといったら簡単に面会してくれた。
そんなに広くない部屋に通されて王がやってきた。
タバコ吸っている。ふざけた王様だ。
しかし何かタバコとは違う気がする。
においが変だな・・・?
ああそうか。マリファナか。マリファナ自体の匂いをかいだことはないが、眼球運動が少しおかしいことから、ちょっと危ないものをやっているのはわかる。
焦点が定まってないよこの人・・・
「どうもどうも。自分でも言うのは何ですが、この国の王のアジーです。」
ひゃっひゃっひゃと笑いながら、アジー王はあいさつした。
Oh・・・こいつぁー気が狂ってるぜ・・・・。
「あなたはいろいろな場所を旅してきたそうですな。」
ああ。はい。まぁ。と生返事をした。
「悪魔は倒される存在ですからなwwwこんな国は他にはなかったでしょうwww」
・・・本気かよこいつ・・。
「しかしですね。旅人さんよ。他の国にこういう国はなかったですか?」
「神に見捨てられた国・・・」
「神に破壊された国・・・」
旅人はひやりとした。そのとき確かに王は確かな眼で私をにらんだ、と。
「無言ですかな?まぁいい無言は承認です。そういう国も見てきたのでしょうね。
こんなにが神といえるでしょうか?いえないでしょう。」
いやに饒舌になったアジー王の話を旅人は黙って聞いていた。
「そういや双子の神を崇めてなくなった国なんてのが最近ありましたな。これだから神は信用できない。私はですね・・・」
「神と悪魔は一緒だと思うのですよ。」
またまた十字軍が編成されそうな一言がこの男の口から出た。
「性別みたいもんだと思うんですよ。形がちがうだけでしょう。角が生えてたり、尻尾が生えてたり。それは人間だって一緒でしょう。胸が出てるとか。ナニがあるとか。」
確かにそうだが・・・
「でもですね。絶対に違うことがあるんですよ。神は願いをかなえてくれるときとかなえてくれないときがあるのですよ。でも悪魔は違う。対価さえあれば・・・。なんでもかなえてくれるのですよ」
「なにもせずに祈るのはただのクズです。努力をしない。徒労もしない。せいぜい手を合わせて祈る程度で雨が降ったり、人が生き返ったりしては苦労がないのです」
この王様気が狂っている割にはなかなかのことを言い放つ。
しかし、神を信じる人間としてはそれでも、といいたくなる。
「しかしですね、アジー王――――






こんな国もあったんだなぁ。
そう思いながら旅人はまた旅立った。
しかしあの男・・・。
間違った論理ではない、確かに彼の言うこともわかる。
だが、誰もがああ言っても納得できるわけではない。
あの狂った空間、狂った眼、狂った男が急にまじめに語りだすからなのだろう。
ギャップというやつだ。
悪魔崇拝――――。
考え物だな。と旅人は思いながら次の国へ向かった。

       

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