Neetel Inside ニートノベル
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彼女はまだ名探偵
プロローグ

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 窓からのぞくのはどこまでも澄み渡る夜空。そして、その中に大きな満月が輝いていました。
 月明かりが二人を照らします。

 いわゆる『名探偵』は泣いていました。子供のように泣いていました。
 『名探偵』の前にはいわゆる『犯人』が立っていました。

 『犯人』は泣いていませんでした。それどころか、うっすらと笑ってさえいました。これもまた、子供のような笑みでした。

「どうして・・・・・・どうしてこんなことをしたの」
 『名探偵』は嗚咽を漏らしながらも、『犯人』に言いました。
 『名探偵』は『犯人』が何を考えているのかまったく分かりませんでした。
 だから、勇気を振り絞って、ここに来たのです。
『名探偵』の声はとてもとても小さいものでしたが、『犯人』はそれにこたえました。

「なぜでしょうか。考えなさい」
 よく手入れされている弦楽器のような声でした。
「分からないよう」
「あなたは優しいのですね」
 『名探偵』の涙の粒がポトポトと灰色のカーペットに落ちていきました。
 その様子はまるで泣き虫な幼い学生と、その子に接する子供思いの教師のようでした。

「私が悪かったの?」
 『名探偵』は真っ赤な目で『犯人』を見ました。その目には恐れの色が宿っていました。

「いいえ」
 『犯人』は優雅なしぐさで首を横に振りました。肩にかかった黒髪がふわりと舞いました。そして『名探偵』の頭をゆっくりと撫でました。
「あなたを思ってのことです」
 とてもとても優しい声でした。

 だからこそ、『名探偵』は泣くことしかできませんでした。
「あなたはここに着いたのです。だから・・・・・・」
 『犯人』は『名探偵』に何かを投げてよこしました。それはお守りでした。
何と呼ぶのかは分かりませんが、花の形をしていました。

「これで終わりです」

「そんなの嫌だよう・・・・・・何で、何で」
 『名探偵』はついにその場に崩れ落ちてしました。
 『犯人』もそれに合わせてしゃがみこみました。そして自身の両手で『名探偵』の手を包み込みました。
 その手には確かに人の血が流れており、『名探偵』に柔らかなぬくもりを与えました。


「これからのあなたが、幸せに暮らしていけますように」


       

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