Neetel Inside 文芸新都
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オショーネシーへの考察
4.自殺防止のための

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4.自殺防止のための

 いつの間にかベンチに寝ていて、隣で男が本を読んでいた。私の体にはジェダイのローブが置かれていた。洗剤のにおいが心地いい。頭を上げて、あたりを見渡した。男が本から目を放し、おはようと言った。
「おはよう。起きなかったらどうしようかと思ったよ」男が手に持っている本を見た。単行本で、表紙には「Ode:Arthur O’Shaughnessy」と書いてあった。
朦朧とした意識の中で考えた。お礼を言うべきか。私は助けられていて、ここで寝ている。それは事実なのだが、川に落とされたし、金も要求した。どう反応すればいいのかわからない。
「何なんですか、あなたは」
「俺? 俺は水梨といいます」
頭をかきむしる。この男はよくわからない。彼は笑みを浮かべながらこちらをみていた。気まずくなって、腕で顔を隠す。
「なんで死のうと思った?」
彼が言った。両親が事故で死んで、寂しくなったからと言うと、ベタだなと笑われた。少しだけ楽になった。


私は、水梨とホテル街にいた。最初は襲われるのかと思って身構えていたが、彼にその気はまったく無いらしい。彼は悠然と歩いていたが、私たちは白い目で見られていた。彼にそれを言うと、そういうことでしかアイデンティティーを保てないんだから放っておけと笑った。
河川敷で彼は自分のことについて話した。
彼は、自殺を阻止してその家族や本人から謝礼をもらって生計を立てているそうだ。「おとくいさま」というのがいて、毎回自殺を試みているらしい。自殺するたびに彼に止められるのだからご苦労様だ。
 彼は自殺を探知することができる、と言った。私の自殺を知ることができたのもそのおかげだと言って笑った。そこで嘘だと言ったのが間違いだった。彼は本当だ、と剥きになり、本当かどうか証明してあげるからついてきな、と笑った。


彼がラブホテルから出てきた男女を指差した。
「自殺するのは、あれだ、あの女だ」
唐突に言うものだから全身がビクリと痙攣した。女を見て言う。
「そんなわけ無いですよ、どっからどうみても幸せそうじゃないですか。自殺なんかするわけありません」
私の目からは本当に幸せそうに見えた。男と話して笑い腕を組みながら甘えている。
「そうだよな、幸せそうだよな」
頭を抱えて悩む彼を見るのは面白かった。

       

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