Neetel Inside ニートノベル
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ジャック「すっかり包囲されてしまいましたね」
シゴキ「誰だよ、俺と同じようなこと考えた奴は……」
???「全てはオナキン様のお導きです」
 露出狂のように見えるマント姿の男がそう答えた。
ジャック「あなたが私達をテレポートさせた訳ですか?」
???「ええ、その通りです」
ジャック「好都合です!」
 ジャックが力を込めると大気が揺れ、またたくまにオナラが百人の敵を包み込んだ。臭くはないけど、臭い気分になってくるぜ。
 オナラが晴れると、そこにいたはずのモブキャラ百人は姿を消し、露出狂っぽい男1人だけが残されていた。
???「ビックリンリンです。てっきりテレポートで逃げてしまうかと思いましたよ」
ジャック「例え逃げたとしてもあなたが連れ戻すのでしょう? さっき肩をつかんだときに付着させた、この発信機のようなモノで追いかけて」
???「ええ」
ジャック「そして私との消耗戦にし、テレポート出来なくなったところを百人がかりで攻撃するつもりだったんですか?」
???「ええ」
ジャック「しかし、その思惑は崩れましたよ。逃げなくていいんですか?」
???「ええ、せっかくの逃げられなくなった獲物を前にして、逃げる必要なんてナイジェリア?」
 なんかこいつの口調ムカつく。やめさせよ。
ジャック「そうですか……」
 ジャックが小声で話しかけてくる。
ジャック「いくつか分かったことがあります。まず彼には感知能力が無いこと。私がテレポートさせた百人を連れ戻さないのも、発信機を使うのもそのためです。
そして・・」
シゴキ「おい、ちょい待ち。露出狂が近付いてくるぞ。都合よく待っててくれる相手じゃねー」
ジャック「では一つだけ。感知能力が無いということは、私達がテレポートで逃げてしまえば、もう追って来れないということです」
シゴキ「逃げるのはありなんだ」
ジャック「戦闘の基本は退路の確保です。今日勝てなくても、明日勝てばいいだけの話ですからね」
 この子、戦いのことになると結構シビアになるなぁ。
シゴキ「よっしゃ。ようはさっきの百人テレポートで疲れてるから、回復するまで時間を稼げってことだな」
ジャック「です」
 よし、俺のトーク術を見せてやるぜ。
シゴキ「YO、俺はヤラハタ シゴキ。あんたは四天王の一人かい?」
???「いいえ、私は百八天王が一人ゼンラーです」
シゴキ「ひゃくはち? 四天王じゃなくて?」
ゼンラー「ええ、以前は四天王だったのですが、なにせ組織が百万人にまでなったでしょう。それに合わせて増量したんですよ」
シゴキ「お、多すぎる。倒しきるのに何ページかかるというのだ……」
ジャック「待って下さい。たしかにゼンラーの性欲は強大ですが、それに並ぶ者は童貞島に百人どころか十人もいませんよ?」
ゼンラー「ええ。正確に申し上げますと百八天王の中の、皮かむり二十一人衆の中の、四神のゼンラーです」
シゴキ「ながい!」
ゼンラー「ほとんどの方は、まだオナ禁を始めて日が浅いんですよ。ですから、四神以外の方々は数合わせの中間管理職とお考え下さい」
シゴキ「四天王が四神になっただけかよ。四神って、あれだろ。白虎とか朱雀とかの。お前の聖獣はなんなんだ?」
ゼンラー「……そこまでのキャラ付けは考えてませんでしたね」
シゴキ「だったら考えといた方がいいぜ。そしたら『五人目の最強戦士、黄竜推参!』とか出せて時間稼ぎ出来るからな」
ゼンラー「ええ、考えておきます」
シゴキ「……」
ゼンラー「……」
 クソ、話すネタが無くなった。最近アニメ見てる? とか定番クエスチョンは場違いだし……そうだ!
シゴキ「お前がオナキンに付き従う理由はなんだ? 金ならくれてやる。人質を取られているのなら誘拐してきてやる。強い奴と戦いだけなら、お前んとこのボスの方がはるかに強いぞ。
悪いようにはせん。こちら側に付け!」
ゼンラー「そんな下らない理由と思っとんのかぁ!」
シゴキ「なんだ、狂信系のキャラかよ。して、その理由は?」
ゼンラー「……あれは、まだ私が留置所にいた頃の話です。私は無実の罪で捕まり、身も心もヒゲもモサモサでした」
シゴキ「無実の罪?」
ゼンラー「私はただ生まれたままの、ありのままの姿を見せただけです。それをあろうことか、世間の俗物共は異常者扱いしたのです」
シゴキ「露出狂かよ……人間が不快に思うことは犯罪になっちゃうんだよ。残念なことに」
ゼンラー「私の裸が何をしましたか!? それに露出狂なんて品のない言い方はやめて下さい。そうですね……露出家とでも呼んで下さい。芸術家のようなノリで」
 絶対、呼ばねー。
ゼンラー「そして露出狂のレッテルを貼られ、再就職もままならぬ私に職を与えて下さったのがオナキン様だったのです。そのときにオナキン様から頂いたお言葉は今でも忘れません。
『仮にお前がヘンタイだったとして、男がヘンタイで何が悪い? それに既存の価値観を塗り替えるヘンタイは進化の鍵だ』
つらくなったとき、苦しくなったとき、この言葉には何度も救われました」
ジャック「いい話っぽくしてますが、内容酷いですよ」
シゴキ「どんどん自分から喋ってくれそうだから黙ってようぜ」
ゼンラー「そして、我命有る限りオナキン様守ると誓ったのです」
 なんか女子高生のプリクラみたいな言い回しだな。
ゼンラー「おっと。誤解されては困りますが、そもそも私はただ下半身を見せ付けるだけの、はた迷惑なゲス野郎とは訳が違います。
まずターゲットがどんな露出を見たいか知る為に、年齢、嗜好、視力、家庭環境、性癖、全てを調べ尽くします」
 な、なにいってんの、こいつ?
ゼンラー「常に勃っているチンチンを提供することも重要です。相手に失礼ですからね。
他にも障害物の有無、外灯の光量、月の満ち欠け、パトカーの巡回経路、全て重要なファクターです。そして一ヶ月以上前から計画・・」
ジャック「少しは回復しましたから早くこの、はた迷惑なゲス野郎をブタ箱送りにしましょう」
シゴキ「そうだな。あそこまでいくと、ちょっと無理だし。いきなり露出の講義をされても反応に困るし。
それと戦う前に一つ確認したいんだが、あの露出狂とお前が兄弟っていう設定はないよな?」
ジャック「ありませんよ、そんな設定。私は一人っ子ですし。それにあんなのと、どこか共通点がありますか!? 私?」
シゴキ「いや、能力が似てるから気になっただけだ。よし。んじゃ、いきますかな」

       

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