Neetel Inside 文芸新都
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ちよちゃんとかみさま
☆番外編(新都社夏企画より)

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ちよちゃんとかみさま/蝉丸


 今日は日曜日です。

 ちよちゃんはリビングでお絵かきをしています。
 おとうさんはその近くにあるテーブルで新聞を読んでいました。

「にゃーん」

 ミーコがちよちゃんのそばに、とことことやってきました。ミーコはおかあさんがお友だちから預かってきたねこです。
さいしょ、ちよちゃんはミーコを怖がっていましたが、いまではすっかりなかよしになっていました。

 ミーコはふわふわとうかんでいるかみさまを、じっとみつめています。

「みえるの?」

 ちよちゃんはミーコにきいてみました。ミーコはかみさまをみつめたままです。

 かみさまは嬉しそうに歌いながら、あっちに行ったりこっちに行ったりしています。
 ミーコとちよちゃんは、かみさまが動くのに合わせて、同じようにあっちを向いたり、こっちを向いたりしていました。

 ちよちゃんとミーコの様子に気がついたおとうさんは、そうっと立ち上がると、
おやつのホットケーキを作っているおかあさんのところにやってきました。

(おかあさん、あれ見てごらんよ、ちよとミーコ)

 おかあさんは手を止めて、キッチンからリビングに目をむけます。
同じように顔を動かしているちよちゃんとミーコを見て、なぜかおかあさんは少し淋しい気持ちになりました。

(なんだろうね? ふたりにしか見えないものがいるのかな?)
(どうだろう? そういえば僕も小さいころ、何かに話しかけてた気がするんだけど、その何かだけ、ぽっかり思い出せないんだよなあ)

 おとうさんがそう言うと、なぜかおかあさんは少し嬉しい気持ちになりました。

 おかあさんはフライパンを火にかけ、ホットケーキの素を流し込みます。
じゅっ、という音がして、いいにおいがあたりに広がると、ちよちゃんはキッチンの方に顔を向けました。

「もうすぐおやつできるから、おかたづけしなさい」
「はーい!」

 ちよちゃんは画用紙とクレヨンを持って、ぱたぱたとリビングを出て行きました。
 おかしなうたを歌い続けているかみさまを、ミーコはまだ見つめていました。




       

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