ちよちゃんとかみさま/蝉丸
今日は日曜日です。
ちよちゃんはリビングでお絵かきをしています。
おとうさんはその近くにあるテーブルで新聞を読んでいました。
「にゃーん」
ミーコがちよちゃんのそばに、とことことやってきました。ミーコはおかあさんがお友だちから預かってきたねこです。
さいしょ、ちよちゃんはミーコを怖がっていましたが、いまではすっかりなかよしになっていました。
ミーコはふわふわとうかんでいるかみさまを、じっとみつめています。
「みえるの?」
ちよちゃんはミーコにきいてみました。ミーコはかみさまをみつめたままです。
かみさまは嬉しそうに歌いながら、あっちに行ったりこっちに行ったりしています。
ミーコとちよちゃんは、かみさまが動くのに合わせて、同じようにあっちを向いたり、こっちを向いたりしていました。
ちよちゃんとミーコの様子に気がついたおとうさんは、そうっと立ち上がると、
おやつのホットケーキを作っているおかあさんのところにやってきました。
(おかあさん、あれ見てごらんよ、ちよとミーコ)
おかあさんは手を止めて、キッチンからリビングに目をむけます。
同じように顔を動かしているちよちゃんとミーコを見て、なぜかおかあさんは少し淋しい気持ちになりました。
(なんだろうね? ふたりにしか見えないものがいるのかな?)
(どうだろう? そういえば僕も小さいころ、何かに話しかけてた気がするんだけど、その何かだけ、ぽっかり思い出せないんだよなあ)
おとうさんがそう言うと、なぜかおかあさんは少し嬉しい気持ちになりました。
おかあさんはフライパンを火にかけ、ホットケーキの素を流し込みます。
じゅっ、という音がして、いいにおいがあたりに広がると、ちよちゃんはキッチンの方に顔を向けました。
「もうすぐおやつできるから、おかたづけしなさい」
「はーい!」
ちよちゃんは画用紙とクレヨンを持って、ぱたぱたとリビングを出て行きました。
おかしなうたを歌い続けているかみさまを、ミーコはまだ見つめていました。