Neetel Inside 文芸新都
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「おかあさん!たぁくんしんじゃった!おかあさん!」
たぁくんとは、ちよちゃんが一番お気に入りのカエルのぬいぐるみです。
お母さんが見ると、たぁくんのくびの所がほつれて綿がはみ出しています。
「あらまぁ。ちよ、乱暴にしたんじゃないの?」
「してないっ」
確かにちよちゃんはたぁくんを乱暴に扱ったりはしませんでした。
けれど、大事にしていたからこそ壊れてしまう事もあります。
「おかぁさんなんとかして、たぁくんいきかえらせて」
「うーん、ちょっと難しいわねぇ…」
「おかぁさぁん」
「ちよ、また新しいの買ってあげるわよ。たぁくんとはお別れして…」
「やだっ!おかあさんのばかっ!」
そう言うとちよちゃんは自分の部屋に閉じこもって泣き出してしまいました。
「ちよ…」
かみさまはお母さんの後ろでふよふよと浮かんでいました。


けっきょく、ちよちゃんはその日泣き疲れてお夕飯も食べずに眠ってしまいました。


翌日。
ちよちゃんが起きると、枕元にはちょこんとたぁくんが座っていました。
「たぁくん!」
ちよちゃんはすぐにぱっちり目を覚まし、たぁくんを抱き上げました。
「おかぁさん!たぁくんいきかえったよ!おかぁさん!」
「ちよ?起きたの?」
ちよちゃんの声を聞いてお母さんが来ました。
何だか少し眠そうです。
「おかぁさんたぁくんがね!」
「あら、たぁくん直ったのね。良かったわね。」
「うん!」
ちよちゃんもお母さんもにこにこしています。
ちよちゃんはかみさまの方をむくと、小さな声で
「ありがと」
と言いました。
その時、窓の外で小さなカエルがぴょんと跳ねましたが、
ちよちゃんもお母さんも気づきませんでした。
かみさまは何となく寂しそうにしていました。

       

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