「かよちゃん!」
真夜中の事です。
ちよちゃんがお部屋で寝ていると、突然誰かが呼びました。
「かよちゃん!」
ちよちゃんは目を覚ましました。
「だぁれ?」
「あら、ひどいわ。いくら久しぶりだからって、忘れちゃったの?」
声のする方を向くと、そこにはかみさまがふよふよ浮かんでいました。
けれど、ちよちゃんといつも一緒にいるかみさまとは、
どこかはわかりませんがちょっと違います。
「だぁれ?」
ちよちゃんはもう一度聞きました。
「もう、よしてよかよちゃん。」
「あたし、ちよだよ」
「あら?かよちゃんじゃないの?」
「うん」
かみさまはちょっと驚いた風でした。
「そう…そうよね。あなた、ちよちゃんっていうの?」
「うん」
「そう。かよちゃんにそっくりだから、間違えちゃったわ。」
そこでちよちゃんはふと気がつきました。
「おはなし、できるんだ」
「おはなし?ああ。そうよ、あたしは、もう違うからね。」
「ちがう?」
「ええ。だけどそんな事はいいの。」
そう言って、かみさまは小さく息をはきました。
「かよちゃんに、あいにきたの?」
「そう…だったけど、もういいの。あなたに会えただけでじゅうぶん。」
「じゅうぶん?」
「ええ。とっても嬉しいわ。」
ちよちゃんは、かみさまの言っている事を考えようとしました。
けれど眠くて眠くて、考えがまとまりません。
「あら、ごめんねちよちゃん、こんな時間に起こしちゃって。」
「だいじょぶだよ」
「ううん。ありがとうね。さ、おやすみなさい。」
「うん…おやすみ…」
目を閉じると、さっき以上に深く優しい眠りが、ちよちゃんを包みました。
「かよちゃん!」
「あら、ちよどうしたの?」
朝、台所に立つお母さんにちよちゃんがそう声をかけました。
お母さんはちょっとびっくりしています。
「かよちゃん!」
「なぁに?どうしたのよいきなり。」
「おかぁさんかよちゃん?」
「ええ、そうよ。あ、またお父さんに変な事教えられたんでしょ!」
お父さんは必死に自分じゃないと言いましたが、お母さんは信じませんでした。
ちよちゃんはずっとにこにこしていました。
かみさまも、嬉しそうにしていました。