Neetel Inside 文芸新都
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「わぁっ!」

公園で遊んでいたちよちゃん。
突然の風に帽子を飛ばされてしまいました。
買ったばかりの、お気に入りの帽子です。
「おかぁさぁん」
「どうしたの?ちよ。」
お母さんが見ると、ちよちゃんの帽子が木の枝に引っかかっています。
「あらあら、今の風で飛んでっちゃったの?」
「うん」
「けっこう高いところね…」
帽子の引っかかった枝は、木のずいぶん上の方です。
お母さんの身長では、届きそうにありません。
「あら大変。」
一緒にいたあやちゃんのお母さんも困り顔です。
「とってー」
「うーん、ちょっとお母さんたちじゃ難しいわね。今棒か何か探してくるからそこで待ってて。」
そう言ってお母さんは、ちよちゃんをあやちゃんのお母さんに預けると長い棒を探しに行きました。
「うー」
ちよちゃんは今にも泣き出しそうです。
「ちよちゃん、お母さん戻ってきたら、きっとすぐ取れるからね。」
「ちよちゃんだいじょうぶだよ」
あやちゃんも、あやちゃんのお母さんも心配そうに慰めてくれています。
「これなら届くかしらー?」
お母さんがちょっと長めのほうきを持ってきました。
けれど、それでも帽子には届きません。

「…いいよ、ありがと」

ちよちゃんがぽつりと呟きました。
それを聞いてか、かみさまが手をすっとあげました。
すると、

「あっ」

また強い風が吹いて帽子が木から落ちてきました。
「あぁ、良かった。ちよ、帽子落ちてきたわ。」
「うん!」
ちよちゃんは涙をぬぐって帽子を抱きしめました。

かみさまはただ静かに、帽子の引っかかっていた木を見つめています。
枝は風に揺れ、さやさやと鳴っていました

       

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