Neetel Inside 文芸新都
表紙

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ちよちゃんがお部屋でお絵かきをしています。
けれど何だか様子がへんです。
いつもなら、大好きなお絵かきをしている時はにこにこしているちよちゃんなのに、
今はむつかしい顔をしてクレヨンを握っています。
そしてその視線の先にはかみさまがぷかぷか浮かんでいました。

「…むぅ」

どうやらかみさまを描こうとしているけれど、不思議と手が動かないみたいです。
ちよちゃんのクレヨンは画用紙の手前で止まったまま、画用紙はまっしろのままです。
「うー…なんでよー」
ちよちゃんはとうとう、ぷりぷりと怒り出してしまいました。
描きたいのに、なぜか手が動かないもどかしさにちよちゃんもがまんの限界です。

その時、今までちよちゃんを気にもせず歌をうたっていたかみさまが、
すうっと片手をあげました。
するとちよちゃんの握っていたクレヨンがひとりでに動き出し、
画用紙に絵を描きはじめました。
びっくりしたちよちゃん、クレヨンを握りしめたまま、
ぼうっと画用紙を見つめています。

ほどなく絵はできあがりました。
それはちよちゃんのお父さんとお母さんの似顔絵でした。
「わぁ」
その絵はとてもそっくりに描けていたので、ちよちゃんはお母さんに見せようと立ち上がりました。
けれどその絵はすぐにじわりと消えてしまいました。
「あー」
残念そうにちよちゃんは、まっしろにもどってしまった画用紙をばさばさと振りました。
すると画用紙に何か絵が浮かんできました。
それはちよちゃんの知らない誰かの顔でした。
「?」
ちよちゃんが首を傾げていると、その絵もまたじわりと消えてしまいました。
画用紙はまたまっしろです。
ちよちゃんはもう一回やってとかみさまにお願いしましたが、
かみさまは部屋のすみに浮かんで歌をうたうばかりで、
ちよちゃんのお願いを聞いてはくれませんでした。
部屋は夕日でオレンジに染まっていました。

       

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