Neetel Inside 文芸新都
表紙

ちよちゃんとかみさま
★そのにじゅうなな〜さんじゅうはち

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「ちよー、ちょっとそれ取ってー。」
「はーい」

「ちよー、この味どうかしら?」
「ちょっとうすいー」

今日はちよちゃん、お母さんのお手伝いをしています。
時計の針ははなればなれ、お夕飯の仕度です。
いつもよくお手伝いをするちよちゃんですが、お料理の手伝いは初めてです。
食卓で待つお父さんも、何だか落ち着かない様子で台所を気にしています。

「はい、できた。ちよ、これ運んで運んで。」
「はーい」
「気をつけて運ぶのよ?」
「はーい」
「ちよ、お父さんが運ぼうか?」
「お父さん、じゃましないの。」
「はーい。」

お夕飯は、何だかいつもよりちょっとだけ、美味しく感じました。


その後、お片付けの手伝いもしたちよちゃんは「つかれたつかれた」とお部屋に戻りました。
そして床にぽんと座ると、突然「はい!」と言って両手を前に出しました。
目の前にはかみさまがぷかぷかと浮かんでいます。
かみさまはちよちゃんの手の中をのぞき込みました。
そこには小さなおにぎり。
ちよちゃんがかみさまにと、こっそり握ってきたのです。
「どうぞ」
にこにことしているちよちゃんから、かみさまはとまどうようにおにぎりを受け取りました。
ちよちゃんは何かを期待するような目でかみさまを見ています。
かみさまは、しばらく悩むようにおにぎりを見つめていましたが、
おもむろに空いてる方の手でおにぎりをすっとなでました。
おにぎりは、音もなく消えてしまいました。

「…おいしかった?」

少し考えてから、ちよちゃんがおずおずと聞きました。
食べたのかどうかもわからないので、不安そうな顔です。
そんなちよちゃんに、かみさまははずむような歌をうたいました。
ちよちゃんはそれを聴くと、「ごちそうさまは?」と言って笑いました。

       

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