Neetel Inside 文芸新都
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「ちよ、もうこれでいい?」
「やだっ」
「もー、出かけるの遅くなっちゃうわよ?」
「でもかわいくないんだもん」
「もー。」

今日はお出かけのちよちゃん。
お母さんに髪を結ってもらっているのですが、なかなか気に入った風にならないようです。

「ほら、ここ止めて、これで良いでしょ?可愛いじゃない。」
「かわいくないっ」

もう出かける予定の時間は、ちょっと過ぎてしまっています。
お父さんは時計を気にしながらちよちゃんを待っています。

「ちよー、もう行くぞー。」
「ほら、ちよ、お父さん怒っちゃうわよ?」
「うー…」

ちよちゃんは鏡を見つめたまま、ちょっと涙目になっていました。
そんなちよちゃんを見かねてか、かみさまはそうっと、ちよちゃんの髪を撫でました。
すると、お母さんの結った髪がするりととけて、さらりと肩に落ちました。

「あー、おかーさーん」
「なあに?」
「これー」
「あら、ほどけちゃったの?」
「うん…」

ちよちゃんはうつむいてしまいました。
お父さんはそんなちよちゃんに優しく声をかけました。
「ほら、ちよ、行くよ。大丈夫、そのままでじゅうぶん可愛いぞ?」
「ほんと…?」
「もちろん!」
笑顔でこたえるお父さんに、ちよちゃんはちょっと寂しそうに笑いました。
そして何も言わずにお父さんの手を握りました。
「よし、行こう!」
「うん!」
ちよちゃんは、今度は元気にこたえました。
靴をはいて、玄関を開けて、ようやく準備完了です。

「おとうさんおかあさんはやくー」と手を振るちよちゃんの姿を見ながら、
お母さんとお父さんは顔を見合わせて「やれやれ」とため息をつきました。

       

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