Neetel Inside 文芸新都
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「ねぇ、ちよちゃんはおとなになったらなにになりたい?」

あやちゃんがちよちゃんに聞きました。
今日はあやちゃんのおうちに遊びにきているのです。

「おとなになったら?」

ちょっと散らかし過ぎてしまった部屋を片付ける手を止めて、ちよちゃんは首をかしげました。

「うん、おとなになったら。あたしはね、せんせいになりたいなぁ」

「せんせぇ?」

「そう、おとうさんみたいなせんせいになりたいの。それにね、おかあさんもむかしせんせいだったんだよ」

「そうなんだぁ」

「で、ちよちゃんは?なにになりたい?」

「えっとねぇ…」

「はーい、二人ともおやつよー。」

その時、あやちゃんのお母さんがおやつを持ってきました。
「あら、お部屋片づけてたの?二人ともえらいじゃない。」
「へへー」
二人は顔を見合わせて笑いました。
「でも二人とも、お片付けはえらいんだけど…」
お母さんは部屋を見渡して苦笑い。
「すみに寄せるだけじゃなくて、ちゃんともとの場所にしまおうね?」



「あのね」

おやつもすっかり食べ終わって、お片付けも終わった頃、ちよちゃんがぽつりと言いました。

「あたし、おかぁさんになりたいなぁ」
「おかあさん?」
「うん!」
ちよちゃんは元気よくこたえました。
「やさしくってね、おりょうりがじょうずでね、かっこいいだんなさんがいてぇ…」
「うんうん」
「それでね、かわいいおんなのこのね、おかあさんになるの」
「おんなのこの?」
「うん!」

笑顔で話すちよちゃんを、かみさまたちは穏やかな歌をうたいながら、じっと見守っていました。
外には冷たい、風が吹いていました。

       

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