「のどかわいた」
ひとりでテレビを見ながら、ちよちゃんがわがままを言っています。
「のどかわいた」
もう一度、ちよちゃんは言いました。
視線はテレビに釘付けで、かみさまの方を見ようともしません。
かみさまには目が無いので、どこをみてるかわかりませんが、ちよちゃんの事を
黙って見ているふうです。
「おみずでいーからぁ」
ちよちゃんはあくまでも自分で水をくみにいかないつもりです。
するとかみさまはすーっと台所にむかいました。
そしてコップに水をそそぎます。
「ありがとう」
ちよちゃんが言うと、かみさまはことんと、台所にコップを置き、ちよちゃんの
そばに戻ってきました。
「…わかったよぅ」
おりこうさんのちよちゃんは、ついにあきらめて台所に立ちました。
かみさまはまたよくわからない歌をうたっていました。
「おかあさんきらい…いなくなっちゃえ…」
お母さんに叱られて、泣きながらちよちゃんが呟きました。
自分のお部屋で電気も点けず、ひとりで泣いているのです。
「おかあさんすぐおこるからきらい…」
かみさまは静かに浮かんでいます。
「おかあさん…」
ちよちゃんは泣きやみません。
そんなちよちゃんを、そこに無い目で見つめながら、かみさまがすっと手をあげ
ました。
「ちよ?まだ泣いてるの?」
するとお母さんがやってきました。
「ちよ、反省した?」
ちよちゃんはうなづきます。
「よし、ちよちゃんはいい子ね。もうしちゃだめよ?」
ちよちゃんはまた小さくうなづきます。
「お母さんも、言い過ぎちゃってごめんね。」
お母さんはちよちゃんを優しく抱きしめました。
さみしがりやのちよちゃんは、また声をあげて泣き出してしまいました。